新たな自分でいっぱいにするよ

感想は自分のためのエンターテインメント

2019年現場メモ

1月

・1/13:ミュージカル『テニスの王子様』青学vs四天宝寺(メルパルク大阪)

 

2月

・2/14:『PRINCE OF LEGEND』完成披露上映会&PREMIUM LIVE SHOW(横浜アリーナ

・2/16昼:ミュージカル『テニスの王子様』青学vs四天宝寺TOKYO DOME CITY HALL

・2/28:唐版 風の又三郎Bunkamura シアターコクーン

 

4月

・4/23昼:キンキーブーツ(東急シアターオーブ

 

7月

・7/13昼:ミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs立海 前編(TOKYO DOME CITY HALL

・7/14昼:ミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs立海 前編(TOKYO DOME CITY HALL

5年越しの約束、あるいは''I want to meet again''(テニミュ3rd全国立海前編に寄せて)

2019年7月11日、ミュージカル『テニスの王子様』全国大会 青学vs立海 前編が開幕した。

公演終了後、Twitter上でレポが回ってきた。興奮した観劇者たちのざわざわとした感想が流れていく。その中に、こんなツイートがあった。

「まさかあの曲が使われるなんて」「アンコ曲マジ?」「2ndのおたくやばいよ」

 

わたしの観劇予定日はまだ先だったが、元々地方住みで、レポが回りきった後に観劇することに慣れていたこともあり、さしたる逡巡もなくセットリストを検索した。

まとめられたセットリストの1番最後、アンコール曲に、『頑張れ負けるな必ず勝て』が入っていた。

 

『頑張れ負けるな必ず勝て』(以下GMKK)は、テニミュ2ndシーズンの全国立海公演から使われた曲だ。通常、アンコール曲は複数公演を通して使われるものだが、本公演でこの曲が使われたのは全国立海公演のみ*1だった。タイトルの通りストレートにプレイヤーを鼓舞する良曲で、「軋むテニスシューズの音を覚えていてね」*2という公演と試合を二重写しにした歌詞と相まって、個人的には2ndで1,2を争うくらい好きな曲である。2ndの全国立海が2014年だったため、5年振りの楽曲復活ということになる。元々GMKKのような名曲が1公演使われただけで終わったことを口惜しく思っていたため、今回の復活は非常に喜ばしかった。

 

▽▲▽

 

わたしの3rd全国立海前編公演初日は2019年7月13日だった。

その日のチケットは大変良席で、アリーナ前方一桁代の段差列、ほぼ中央の位置だった。視界を遮るものは何もなく、数メートルの距離にキャラクターたちが立っている。公演の間中、自らの頭上に位置する演者を夢中で見上げていた。歌も言葉も光も「上」から降り注いでくる。光を背負ってステージに立つキャラクターたちを見上げると、それだけで胸が詰まって神聖な気持ちになった。

公演自体もとても良かった。個人的に、3rdで1番好きな公演かもしれないとまで思った。特に終盤の構成が良く、クライマックスからノンストップで畳み掛けてくる曲たちにくらくらした。

そして、その興奮のままアンコール曲が始まる。

前奏が流れた時点で「これはすごいことだ」と分かった。自分である程度は予想していたことだが、感情が大きすぎて処理できなかった。肩が勝手に震えて喉の奥がひくついた。5年前の記憶が蘇る。もう過ぎ去ってしまったもの、二度と観ることができないと思っていたものが目の前のステージに重なって現れて、視界がチカチカした。

 

「軋むテニスシューズの音を覚えていてね」

 

それは、2014年に交わした約束だった。少なくともわたしは約束をしたと思っている。「覚えていてね」と歌われて、「ずっと覚えているよ」と思った。覚えていた。5年間覚えていて、3rdに通っていた。そうしたら、2019年にまた会えたのだ。5年越しの約束が達成された気分だった。

GMKKはそのまま3rdのアンコール曲である『スマイル・アンド・ティアズ』に繋がった。多幸感をそのまま楽曲にしたらこうなるのだろうな、という曲だ。ステージの上で、キャラクターたちがキラキラの笑顔で、''l want to meet again''と歌う。これが「覚えていてね」と繋がっていることで発生する意味合いに胸がいっぱいになってしまう。ステージから浴びるキラキラを抱えきれなくなって、また肩が震えた。

 

そもそも、againという言葉自体、非常に「テニミュ的」だ。

ミュージカル『テニスの王子様』は巡る物語である。現在3rdシーズン、3巡目。話は巡る。キャストは代わる。同じ場面を違う歌で、あるいは、同じ話/歌/ダンスを、違う人間で繰り返す。桃城は南次郎になり、謙也はオサムになる。*3 さまざまな物事が、繰り返して、変わって、続いていく。

 

▽▲▽

 

GMKKを見て思い出したことがある。

わたしは七代目青学が好きだ。3rdに移行して数年経ったある日、急に「もう七代目を見ることは出来ないのだ」という事実に耐えられなくなり、同じく七代目好きを公言している人にメッセージを送った。その人は「私も、死ぬ前の走馬灯でLet's get it on togetherを見るんだろうと思っています」と答えてくれた。寂しい人間は自分だけではないと慰められた。

今回の公演を観てその言葉を思い出し、以前はあまり気に留めなかった「走馬灯で七代目に会える」という言葉がストンと胸に落ちた。わたしももしかしたら、死ぬ前に七代目の走馬灯を見るのかもしれない。それは嬉しいことだと思えた。GMKKを再び観ることができたように、きっと、いつかの人生でまた彼らに会える。未来が繋がったような気持ちになった。

永遠に終わらないものはない。同じ公演でも舞台は毎日違うように、キャストに卒業があるように、テニミュもいつかは終わってしまう。それは悲しいことだけれど、終わったあとに残るものも続くものもあるのだと、そう信じられるようになった。またこうやって、どこかでかつての何かの片鱗と出会えることがあるのだろう。それはきっと、いつかのわたしを救ってくれる。

 

▽▲▽

 

2014年、わたしは確かに約束をした。それは5年後の2019年に果たされて、その瞬間にまた同じ約束をした。

「軋むテニスシューズの音を覚えていてね」

覚えているよ。いつでも覚えているから、これから先も通うから、終わってもずっと好きだから、だから、また会おうね。

 

取り敢えずは、続くものとしてのテニミュ4thの決定と、巡るものとしての榊太郎加藤和樹の起用、よろしくお願いします。

 


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*1:2nd全国立海は前後編に別れていなかったため、本当に1公演のみ

*2:テニミュは必ず「キュッ…パコッ…」というテニスシューズの軋みとボールを打ち返すSEで幕が上がる

*3:1stで桃城役を演じた森山栄治さんは2ndの越前南次郎役を演じ、2ndで忍足謙也役を演じた碕理人さんは3rdで渡邊オサム役を演じた。

人生と現実と未来(『さらざんまい』最終話感想)

さら最終話、良かっっっっっったですね………………。

悠の笑顔が良かった。本当に良かった。悠のあの笑顔を十二分に味わうためにこの土日でもう一度最初から最後まで通して見ました。良かった、本当に。

正直それまでの話の中で噛み砕けていない部分はあるし、さらざんまいで繋がることの暴力性は肯定できないし、アナルからピンクの粘液を噴き出す表現などはグロテスクだなとずっと感じていますが、とにかく最終話が本当に「上手い」コンテンツで、メッセージが力強く厳しくも爽やかで、良かった……。

最終話のメッセージ、「この世界で生きていくこと」の肯定とエンパワーメントだったと思っています。

 

わたしは久慈悠が自らの罪を社会的な枠組みの元に償えたことがめちゃくちゃ救いだと思っていて、つまりその行為そのものが外界とのつながりなわけじゃないですか……。

これは個人的な意見ですが、本来なら兄との決別も悠自身の決断により行われるべきものだったと思っていて、その話自体の強度は別として、彼は自分の意思で兄の元を離れるべきだったし、そう出来なかったことに正直に言って少しガッカリした部分があります。*1

しかし、兄との決別が一種過剰なほどドラマティックな銃撃戦と死によってもたらされたからこそ、悠が少年院という現実的で地に足の着いた贖罪を行ったことが本当に嬉しかったし、それが彼自身を救う行為だと感じました。あの3年間で全ての罪が精算できたわけではないし、きっと一生背負って苦しんでいくものだけど、それでも悠の救いになると思うので……。

 

未来の漏洩*2が苦しく困難に満ちていることも良かった。めでたしめでたしではないんですよね。あんな超常的な体験をして濃密な絆を結んだ3人だけど、人生は続いていくので、8皿みたいに傷つけたり疑ったり争ったりする日はまた来る。それでも、そこからまたつながりたいと望めば、そうすることは可能なんです。全てを断ち切って円の外側に行こうとした悠が「失いたくない」と叫んだように。切れたミサンガは結び直せば良い*3し、届けられなかったミサンガは届ければいい。未来は欲望をつなぐものだけが手にできる。

出所した悠が川に落ちるシーンについてもこの強調だと感じます。このシーンについては、どなたかが、これはかつてサッカーボールを捨てたシーンの再演で、悠は自分自身ひいては一稀と燕太とのつながりを捨てようとしていた、と仰っていたのを読みました。そこから考えると、「失ったものは戻らない。けど、それがどうした!」の直後、「取り戻さなきゃいけないものがある」のフレーズに乗せて一稀と燕太が悠を迎えに来るシーンは、「失ったものは取り戻せる」ということなのかなと思います。失ったと思っていてもつながってることはある。捨てたつもりでも、望めば、あるいは望まれれば、取り戻せるかもしれない。*4そこで全てが終わりではないんですよね。その後3人が水面を目指して泳ぐ画面が、黒ケッピ戦後に「それでも、僕たちは」で河童姿の3人が水面を目指して泳ぐシーンと同じ絵面で重ねてあることからもそれが読み取れます。つまり、円の外からの帰還です。だから水面に出てからの「おかえり」なんですね。

 

また、「失ったものは戻らない。けど、それがどうした!」は一稀が尻子玉を渡して春河の命を助けて足の怪我をなかったことにしようとした行為へのアンサーになるとも思っています。現実として、大抵の行為は「なかったことに」はならないわけじゃないですか。辛くても苦しくても、そこからどうにかするしかない。生きて耐え抜いて行くしかない。死は強制的な断絶だし、現実には超常パワーはない。だから、悠が社会的規範に則って裁かれたことは、悠に対する救済でもあったし、「わたしたち」に対する優しさだったと思います。

 

それと、最終話はとにかく演出と構成が素晴らしくて、それが「良かったなあ」を最大限に高めていると思います。コンテンツとしての強度がとにかく高かった。

強度の話はここらへんです。(勢い重視でふわふわした話なのと誤字ってるのは見逃して)

 

コンテンツとしての強度とメッセージ性がどちらも揃っているというのは実は得がたいことだと思います。素敵なものを受け取ることができて嬉しかったです。ありがとうございました。

 

追記

レオマブが光となって一稀たちの暗闇を照らすのも良かったですね。光になったんだよ! レオマブが! 何で復活したのかとかはわたしには全然分からないのですが、でもとにかくあのレオマブが、二人で手を取り合って光になったんですよ……。こんなに素敵なことがある……? 良かったよ、良かった。ありがとう。

 

 

*1:誤解しないで頂きたいのですが、9皿はめちゃくちゃ素晴らしかったですし、Cパートは何回見てもベロベロになってしまうし、この流れは作品として必要なことだったと理解しています。

*2:未来で治療していた一稀の足について、悠から受けた銃の傷も一因ではないかなと思っているんですが、その上足の怪我だから春河の文脈も乗ってくるだろうし、もう地獄の想像がついて目眩がするんですよね……。

*3:この、本来切れることを望まれた円であるミサンガを結び直す行為がとても好きです。したいようにそうすればいい。自分の欲望は自分で決める。

*4:誓の銃や一稀のミサンガもそうですね。悠が隠していたし、春河が拾っていた。

「青野くんに触りたいから死にたい」5巻感想

今更ですが感想!

個人的に、5巻は藤本くんとの断絶と美桜ちゃんとの友情がハイライトでした。

 

まず藤本くん!

藤本くんのシーン、あまりにもワーッ!となったので1回読むのを中断してしまった……。

「家族なんだからいつか分かり合える」という発言、本当に善良さと優しさから来ていて、来ているからこその断絶が……。相手に寄り添おうとする誠実さから出た言葉が返って断絶を深める残酷さよ……。

でもたぶん優里ちゃんも青野くんに指摘される前だとあの顔はしなかったんだろうなと思うんですよね。優里ちゃんは自分の家庭に「健全でしあわせな家族」フィルターを掛けていたので。ただ、優里ちゃん自身がまさしく5巻で言っていたように「青野くんに会う前を思い出せない」わけで、優里ちゃんは既に青野くんの指摘により家庭の問題を認識していて、気づいてしまった以上は不可逆なので、やっぱり藤本くんとはああなってしまうわけで……。

それと、これに関連して興味深いと思ったのが、青野くんが優里ちゃんの家庭の事情をダイレクトに理解できたのは「幽霊だから」という側面が大きいという点です。きっと、青野くんが目撃した場面を藤本くんが見ることはできないんですよね。刈谷家は他人が「いない」から家族としての正常をそのままやっていたわけで、仮に藤本くんが「いた」場合はあれそのままのことは絶対に起こらないわけじゃないですか。つまり、死んでいるからこそ何もかも共有し絆を深めていく青野くんと、生きていることが障壁となり分かり合えない藤本くんという……。本来の生死のアドバンテージが逆転している歪んだ構図だなと思いました。

個人的には藤本くんと優里ちゃんのカップリングをとても推しているのでどうにかなってほしいんですけど、今後もう一段階断絶を深める描写を挟むのか、環境が違っても歩み寄ることはできると示してくれるのか、どっちでしょうね。

 

そして美桜ちゃん!

龍平と優里ちゃんが一緒に別の空間に連れていかれた時、優里ちゃんが「美桜ちゃんならどうするか」を考えて動いたの、めちゃくちゃ深い友情でベロベロに泣けてしまった……。

「あの人ならどうするか」と他人を内包して行動するの、愛そのものじゃないですか。めちゃくちゃ深い友情が育っている。そんなに信頼のできる人に出会えてよかったね……。(感極まるオタク)

 

龍平くんの描き方も良かったですね。

あんな態度をとってるけど根はいい子だし本当は青野くんと仲良くしたいんだなというのが伝わる! 翠ちゃんのこともありもっとギスギスした兄弟関係を想像したので、ホッとしました。(別方向の地獄ではあるんですが……)

本心では兄を慕っている龍平くんと素でヤバい姉である翠ちゃんが対比になっていて、分かり合う余地のある家族と分かり合えない家族とを同作品で提示する多様性、椎名先生は創作が上手すぎないか?

 

5巻で大きく気になったところは上記の3つでした。あとは以下に羅列します。

 

・大翔が「一度間違えたらなかなか信用してもらえない」って言ってたの、この発言時点では立派やな〜と思っただけだったけど、5巻の内容を踏まえると「弟をちゃんと見ていなかったことで母親の信用を失った」経験から来ているのかなと感じて……つらい……。絶対にまだお母さんと溝あるよね。

・以前青野くんが優里ちゃんに対して「この家(優里ちゃんの家)の生贄は交代制なんだ」と発言していましたが、5巻のエピソードを踏まえて、青野くんは「交代制ではない生贄」をやっていたのか?と推測が立ってしまった。

・青野くんが誕生日の前日に死んだことを考えると、青野くんの方に何かしら(母親起因?)の呪いがかかっていて16までしか生きられないようになっていたのかな?

・藤本くんと優里ちゃんが学校で噂になってるというところから思ったことですが、2巻で藤本くんを探しに行った優里ちゃんが体育倉庫に閉じ込められる前、教室で藤本くんの居場所を教えてくれた女の子2人の態度に違和感があったのって、その噂のせいだったのかな?

 

以上!

今の話が終わったら最終章に入るらしいので楽しみ〜! 7巻とかで完結かな? 終わってしまうことは寂しいけど、すごくちょうどいいですね。ひとまずは次の6巻を待ちます。

 

 

今月のネイル(2019年3月)

3月ですね〜!
めっちゃ春じゃないですか!?
記憶の中の3月ってもっと寒かった気がするけどやたら暖かい! 雪の結晶柄のネイルシールを使う機会を完全に逃してしまいました。

3月1週目

https://www.instagram.com/p/Buih3rpBu0w/
「単色塗りがしたい!」という熱い思いによるネイル。
写真で伝わるか分かりませんが、パールが入ったメタリックなシルバーでとっても可愛いんですよ。ちょっと辛口だけど尖り過ぎないカラーでお気に入りです。リピート2本目。

■使用品
・ネイルホリック GY007

3月2週目

https://www.instagram.com/p/Bu3meLthn40/
「先週がシンプルだったからちょっと盛っちゃお!」のネイル。大体毎回その繰り返し。
バラのネイルシールをようやく使えました。購入して数ヶ月使えずにいたので……。ベースが白だからかもしれないけど、パキッと分かりやすいバラでいい感じ。
パールは楽天で購入したやつです。1.5、2、3、4mmのパールのセットで、今回使用したのは多分3mm。こういうゴテッとパール乗せるのをずっとしてみたかった! 指が目に入るたび、指輪つけてるみたいで可愛いな〜とゴキゲンになりました。

■使用品
・ネイルホリック RD403, WT006(薬指)
・パーツ:キャンドゥ しずくウォーターネイルシール バラ、楽天購入品

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今月はここまで!
爪が傷んでるので後半はネイルおやすみしてました。2枚爪が治らない。

第3回テニスの王子様研究発表会 聴講感想

2019年2月23日に参加した第3回テニスの王子様研究発表会の感想です。

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おたまさんがご用意してくださったキャンディフラワー

以前から存在を知っていて気になっていた「テニスの王子様研究発表会」に思い切って参加することにしたのが2018年11月の末、その後調べたり書いたり修正したりしていたらあっという間に当日を迎えました。主催のぽるかさんの丁寧さ・準備の手厚さには感謝してもし足りません。本当にお世話になりました。

当日は「どんな雰囲気なんだろう? みんなすごくテニスに詳しいんだろうし、ついていけるかな」という不安もチョットありましたが、いざ参加してみると一日中あったかほっこり空間でみなさんめちゃくちゃ優しくてもうびっくりするほど楽しかったです!

 会終了後のツイート。超エンジョイしている。

 

各発表のスライドは主催のぽるかさんが サイトで第3回まで公開してくださっています。

 

 

以下、各発表に関する感想をざっくりです。

 

おんねこさん:糸目・閉じ目にみる系譜~柳蓮二の負う「個性」~

トップバッターのおんねこさん! 素晴らしい司会者様でもあります。「こういう雰囲気なのか〜」と勉強させていただきました。

糸目の要素として「雑魚っぽい」という印象がなかったのでへえーとなりました。北斗の拳のモブとからしい。へえー。「東洋の作品以外では糸目キャラが出ない」というのもそうなんだー!となりました。興味深かったです。

また、質疑応答時に「不二先輩が舐めプ(仮)している時は目を閉じて、本気になると目を開けるという描写は、''雑魚''要素と関連があるように思える」と意見が上がり、別の方から「舐めプと言えば、南次郎が井上さんとの試合の時にハンデで目を閉じてましたよね」と繋がったの、発表会という形式を取った意義を肌で感じてビリビリ来ました。すごい! 発表会って楽しい!

 
めしごさん:白石蔵ノ介はなぜ絶頂するのか~ギリシア哲学から見るエクスタシー~

作中舞台装置としての各校の役割という観点のお話と、"完璧なテニス"と「エクスタシー」との間で白石が自己矛盾を起こしているというお話が面白かったです。

プレゼンもゆったりした話し方でとても聞きやすかった。自分が早口喋りタイプなので尊敬です。

あとパワポがすごく綺麗。開始前の発表者集合時にスライドを見て他の参加者の人が「パワポのバイブル」って言ったのウケました。


るく:関東氷帝・手塚vs 跡部戦「決着をつけよう'' ぜ''」の消失に関する考察 

わたしです。

内容はこちらの記事にまとめています。

 

lookmusical.hatenablog.com

 
トモエさん:テニスの王子様におけるスポーツマンシップ- 王子様たちのテニスにおける価値観ついて 

テニスの王子様における倫理基準について、観戦しているキャラクターの反応から読み解く。

テーマは「スポーツマンシップ」なんですが、個人的にはむしろ能力バトルとしてのテニスの王子様の法則性を紐解いているように感じ、発表の途中からずっと頭の中で「カード!ドロー!(ジャーッジャジャジャージャジャジャーッ)」って流れてた。

これはセーフなのか、じゃあこっちは?って考えてみるの楽しいなーと思いました。

参考文献の『スポーツ倫理学講義』はメチャ面白なのでオススメです。スポーツのファンについての言及もあるよ。


チョコバナナさん:雅治のイリュージョン

まっさはるの〜イリュージョ〜ン。

終始、「そんな……えっ? そんな……えっ!?」みたいな面白さでした。完全にわたしの意識の外側にあったものをガツッと提示されてオロオロしてしまった。

仁王のイリュージョンに対する周りの反応から、身体的イリュージョン→肉体的イリュージョンへの移り変わりまでとにかく気持ちよくまとめられていて面白さでボッコボコになりました。イリュージョンのことなんとも思わず受け入れていたんですけど、こんなちゃんとした法則性があったんだ!?!?となり、すごい……広ぇーや全国……という気持ち。

あとプレゼンもめちゃくちゃ上手かったです。べしゃりがお上手。


市川芯子さん:片眼の真田、その後~少年は神話になったか~

以前から過去発表(「片眼の真田~供物から神の域へ~」)のスライドを拝見していたので今回その後のお話が聞けてとっても嬉しかったです!(質疑応答で出た「幸村の好物は魚」に関しても前回研究で触れられてましたね)

黒龍二重の斬の龍というモチーフについて、龍は鯉から来ている→鯉といえば神社にいる→神社=神の供物との関連、というロジックが決まりすぎて気持ちよくなっちゃいました。

締めが「シングルスでの試合が待たれる」でしたが、次号のSQで真田のシングルスが始まる予定なので、ドキドキしてしまう……。


ぽこさん:ホストの王子様 ─その実態および意義の検討─

何でか当日まで「ナンパの王子様」と混合していてその話だと思っていたら実在のホストのみなさんについてのお話だったのでびっくりしました。(説明読んでたはずだったんですが……)

発表中に切原赤也さん(ホスト)の誕生日が今日だと気づいて会ったこともない切原さん(ホスト)をその場でお祝いしたの、すごく楽しかったですね。一体感があった。

質疑応答で実際に該当の王子様(ホスト)に会ったことのある人が複数名名乗り出てきて盛り上がりました。越前リョーマはホストの神。


寿甘あずさん:二次創作作品を閲覧する、または自身で行う個人における跡部景吾の呼称と当人の好むカップリングの相関

BLについて全く無知なので新鮮なお話でした。跡部様をリトマス試験紙にしようという発想が面白い。

CPの左右により呼び方に差異が出るかとかも気になるな~と思いました。(もしかして発表で触れてたらすみません…)

滝さんとのCPを推してる人だと跡部様を「景吾くん」呼びしがちというの面白かったです。


らいむさん:「菊丸は手塚が苦手」考

これすごかったんですよ! とにかく情報が潤沢! 調査対象が原作、アニメ、テニラビ、テニミュと多岐に渡っており、各メディアの画像を使用した求心力のある発表スライドに加え、何と漫画・アニメ・テニラビの会話ト書きが別綴じで付いていた! 付録ですよ付録! 元ちゃおっ子だから付録に弱いんだよ〜、すごいよ〜。

アニメにもテニラビにも詳しくなくて原作とアニメで試合展開が違うことを知らなかったので勉強になりました。キャストがどこまで設定を意識しているか?というお話も興味深かったです。写真の写り方とか結構露骨で笑ってしまった。


わーいさん:なぜ、テニミュのチケットを何度も何枚も買ってしまうのか~テニミュの人気をマーケティング視点から紐解く~

資料がプロでした。講演会か企業説明会のようだった……。

「エンターテインメントの観客参加型化による風潮でテニミュ運動会が開かれないんじゃないか」という指摘が、「分かるけど!運動会やってほしい!!!」というご本人周辺の意見も含めて面白かった。

個人的な話になりますが、学生時代に2.5次元舞台のマーケティングに絡めた論文を書いた経験があり、その時「ここらへんは今発展途上だし今後変わるんだろうな(ので論文では触れないでおこう)」と考えていた俳優→2.5次元舞台や2.5次元舞台→他の2.5次元舞台のサイクルについての言及もあり、ものすご〜〜〜く興味深かったし尊敬いたしました。


かやのさん:スタッフページから見るテニミュ

お恥ずかしながらスタッフページを認識したことがないレベルだったので「ここにこんな潤沢な情報が!?」とびっくりしました。自分の知らない情報をまとめたものを聞かせていただけるのすごく楽しい。

テニミュやスタッフについて無知なので具体的に語る言葉も持ち合わせてなくて恐縮なのですが、テニミュに詳しい人の話を聞くのがとっても好きなので本当に聞いてて気持ちよかったです。この会を通して気づきましたが、面白い考察を聞くのは気持ちいい!


ののさん幸村精市ルノワール

残念ながら当日はご病気で欠席されていましたので、要旨のみ読ませていただきました。ルノワールの病気のことを知らなかったので、へー!そんな関連が!となりました。後日スライドも掲載してくださる予定だそうなので楽しみです。


ぽるかさん:いつか王子様が

「王子様」という概念についてのお話。多岐に渡るテーマをガンガンに聞かせていただいた後にこの包括的なテーマで締めるの、センスのいいフルコースみたいで幸せでしたね……。

テニスの王子様」というタイトルが「ヒカルの碁」のヒットを受けた流れじゃないか(これは多分質問者の発言だったかな?)とか、「テニスの王子様」以後しばらく「○○の××」というタイトルがジャンプ作品に出なくなったのはテニスが流行りすぎたからではないかとか、ジャンプ作品くくりでの視点が個人的に新鮮でした。

あの、「王子」の2つの要素が合流するところにテニスの王子様が位置しているスライドがすごく好きなんですよね……スライド公開楽しみ……。

 

 

以上、ざっくり感想でした。

感想、「面白い」「気持ちいい」ばっかりですが、素晴らしい考察を聞いた感情はその2つに集約されるんですよ……。本当に楽しかった。発表が面白いのはもちろん、聴講者の方から出る質問も面白いものばかりで、あんなに、あんなに楽しいことが……人生って楽しい……。(よろよろ)

また、発表会後に懇親会があり、会場の使用時間まで残った人でいくつかのグループに分かれてお話しました。そこでも面白い話がドバドバ出てきてすごかったですね。「手塚国光」が越前リョーマに次ぎテニミュ歌詞に頻出なのは7音(気持ちよく感じる音数らしいです)だからじゃないかとか、青学は7音の名前多いですよねとか、比嘉の全国出場が26年ぶりというのは26年前に晴美ちゃんの代で全国に行ったんじゃないか説とか……。

本当に1日中ずっと楽しくて、参加して良かったし、こんな楽しいことがある東京ってすごいな!!!と思いました。

この会を開催してくださった主催のぽるかさん、運営のおんねこさん、市川さん、おたまさん(おたまさんも運営ですよね?勘違いでしたら申し訳ないです…)には感謝でいっぱいです。ありがとうございました。準備段階から当日まで本当に丁寧で素晴らしく、今日まで頭が下がり続けております。隅々まで心遣いが行き届き、丁寧で円滑で快適で、熱意と優しさとホスピタリティに溢れ……わたしの語彙ではこの素晴らしさも感謝も上手く表現できずに歯痒いのですが、本当にすごかった! すごかったんです!!! 心からありがとうございました!!!

第4回も前向きに検討しますとのことで、もし実現したら是非また参加させていただきたいなあ~~~と思います。

 

運営のみなさま、発表者のみなさま、聴講者のみなさま、みんなみんな、本当にありがとうございました。

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当日使用した名札

 

追記:

発表会用の掲示板にわたしの発表の感想を書き込んでくださった方々もありがとうございました!

とっても嬉しくてありがとうと言いたかったのですが、わたしの発言で掲示板を埋めてしまうのも申し訳なかったので返信を遠慮してしまいました。

これを読んではいないと思いますが 、もし読んでいたら、ありがとうございます。嬉しかったです。

関東氷帝・手塚vs跡部戦「決着をつけよう”ぜ”」の消失に関する考察 - 第3回テニスの王子様研究発表会発表内容

 

2019年2月23日に狸穴さん(twitter:@mamianical_info)主催の「第3回テニスの王子様研究発表会」で発表した内容です。

会の概要や発表タイトル一覧はこちら→ 第3回テニスの王子様研究発表会 | Peatix

 

発表者(わたし)はまったく言語の専門でも専攻でもなく、それっぽいことしてるだけのゆるふわ発表資料なのでゆるふわで読んでいただけるとありがたいです。

また、スライド及び記事内で原作の画像を使用しておりますが、出典を明記し引用の範囲内で取り扱っているつもりです。以上、よろしくお願いいたします。

 

▷発表スライド(ざっくり把握したい方はこちらだけでも分かるかと思います)

 

▷研究のきっかけ 

2018年に新作OVAテニスの王子様 BEST GAMES!! 手塚vs跡部」が作成されました。その劇中で、手塚くんの台詞「決着をつけようぜ」が「決着をつけよう」に修正されていることに気がつきました。手塚くんが珍しく好戦的でたいへん好きな台詞でしたので変更されたことを残念に思い、どのような意図でこの修正が行われたのか理由を探ってみることにしました。

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該当のシーン:許斐剛テニスの王子様』18巻、集英社、2003(デジタル版:2012)、44頁

 

▷仮説

研究を進めるにあたり、最初に2つの仮説を立てました。

 

仮説①:連載当時から現在までの時代の変化に伴い、キャラクターの言葉遣いが変化した。

仮説②:当該の台詞が手塚のキャラクター性にそぐわないと判断された。

 

▷仮説①の検証

テニスの王子様』の連載開始が1999年であることから、OVAが作成された2018年までの年月で世間一般の言葉が移り変わり、創作物上の言葉遣いも変わったのではないかと仮定しました。古い少女漫画でよくあった「だわ」「なのよ」も最近の少女漫画では使われないことが多くなってきたように、「ぜ」もオールドファッションなのかなということです。あるいは、関東氷帝戦はそこそこ初期の試合*1であるため、長く続く連載の中で手塚くんの口調が変化した可能性もあります。

しかし、調査する中で、TV放送*2のアニメシリーズ『テニスの王子様』でも同様の台詞修正*3が行われていると分かりました。その上、この頃のTV放送は超過密スケジュールだったようで、当該のシーンの本誌掲載からTV放送までわずか4カ月足らずしかありませんでした。

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よって、時代の変化もキャラクターの変化も生じていないということになります。

以下、仮説②について掘り下げていきます。

 

▷仮説②の検証

仮説②(手塚のキャラに合わないんじゃないか説)、この研究テーマを選んでから「ぜ」問題についてざっと調べましたが、ファンの意見もおおむねこの説に類似した感じでした。「手塚っぽくないからかな?」ということです。では、具体的にはどこがどう「手塚っぽくない」のでしょうか? それを明確にするために「手塚っぽい話し方」について探っていきたいと思います。手塚らしい話し方を探れば、そこから外れている=手塚らしくない、とできるはずだからです。

しかしその前に、「キャラクターはキャラクターらしい話し方をする」と決めつけていいのでしょうか? 人間は必ずしも一貫した話し方をするとは限らないはずです。

この問題について、本研究では前提として役割語の観点を用います。役割語とは、大阪大学金水敏教授が2003年に提唱した比較的新しい考え方で、ざっくり言うと、「創作物において、話し手のキャラクター性を描写する特定の言葉遣いのこと」*4を指します。 つまり、「ワシの若い頃はのう」と発言しているのは老人、「あら嫌だ、お里が知れてよ」と発言していたらお嬢様なんだなと分かるように、言葉遣いがキャラクターのパーソナリティを構築し想起させる重要な一要素であるということです。

テニスの王子様」ではキャラクターたちはしばしば特徴的な言葉遣いをします。仁王の「プリッ」、柳沢の「だーね」、観月の「んふっ」、丸井の「だろぃ」などです。「テニスの王子様」は役割語的な観点により規定されたキャラクター描写をされていると言えます。

以上のことから、「手塚国光は、手塚国光というキャラクター性を表現する言葉遣いをしているはずである」という前提を元に研究を掘り下げていきます。

 

仮説②の実証のために以下を集計しました。

 

・集計対象:『テニスの王子様』全42巻

・集計項目:①終助詞:ぜ、ぞ、な(非命令)、だろ、かよ、か(疑問)、ね、よ、の(非疑問)、かしら、わ、だ、かな、か(非疑問)、の(疑問) ※方言と敬語は除外

      ②指示表現:命令型、確認型

      ③音変化(例:「うるせえ」「何スか?」)

・調査対象:中学テニス部員 (方言話者は除く) + 桜乃、朋香、杏

・調査人数:100人

 

調査対象や調査方法*5については色々細かくルール決めがあるので気になる人は脚注を読んでください。ルールを用いて絞ったネームドキャラクターを数えるとちょうど100人*6集計した結果、集計項目に1以上の該当があったキャラクターは82人*7です。

集計項目の②と③に関しては結論には直接関係がないのでおまけくらいの要素だと思っていてください。

 

▷▷仮説②の検証:手塚の言葉遣い特徴

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手塚くんの使用する終助詞の内訳です。「だ」がもっとも多く、次が「な」であることが分かるかと思います。問題の「ぜ」に関しては該当の台詞1回のみの登場でした。「ぜ」の使用はイレギュラーであると言えます。

これは余談ですが、手塚くんの口癖である「油断せずに行こう」からも分かる通り、そもそも手塚くんは「行こう」「しよう」のような言い切りの形が多いんですよね(発言数のデータは取ってないので多いというのは集計していてわたしが感じた印象ということになってしまうのですが)。それと、「ね」は一度も使用されておらず、「よ」も使用されたのは4回*8のみです。その4回も全て、命令表現+「よ」の命令形に付随する使用であり、「だよ」のような使われ方はしていません。

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また、指示における命令表現*9の回数が登場人物中もっとも多いというのも特徴でした。これは主人公校に所属し出番が多いこと、部長という立場であることも要因であると思われます。

 

▷▷仮説②の検証:他者との比較

日本語と言えば言葉遣いに男女差が現れやすい言語です。「女性語」「男性語」なんて言うとこのご時世ちょっと引っ掛かりを覚えてしまったりもしますが、周囲の人間の言葉遣いを思い浮かべても、昔ほどではないとは言えやはりまだまだ男女で言葉遣いに違いがあるのではないかと思います。「ぜ」は一般的に男性が使う言語と言われています。所謂「男性語」を「力強い・粗野」、「女性語」を「柔らかい・丁寧」な言葉であるとして、登場キャラクターたちの傾向を比較してみます。ここでの集計項目は以下です。

 

・「男性的」な終助詞:ぜ、ぞ、な(非命令)、か(疑問)

・「女性的」な終助詞:の(非疑問)、よ、ね、かな

・調査対象:本研究で集計した終助詞に集計数20以上の該当が見られる中学生プレイヤー+桜乃・朋香・杏

・調査人数:42人*10*11

 

終助詞について、集計した中で「男性的」「女性的」傾向が強いものを同数抜粋しました。調査対象を上記の絞り方にしたのは、ある程度のサンプルがないと偏り*12が出るからです。

以下が抜粋した項目を元にした散布表です。
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(一応拡大したら全員分の名前も確認できるはずです。)

斜めに走る線が「男性的」「女性的」のちょうど真ん中です。この線から遠く、縦軸・横軸に近いほど終助詞における「男性的」「女性的」傾向が強いということになります。手塚くんはかなり「男性的」に寄っていますね。

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上記の表で、手塚くんと比率が近い(つまり男性比が強い)キャラクターを抜粋しています。この4人と内訳を比較してみます。

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見た感じ、一定の傾向は見られないかと思います。真田*13と柳は比較的手塚くんと似た印象を受けますが、ジャッカルとバネさんは手塚くんと全く違うしバラバラです。

「男性的」な話し方をするから「ぜ」を使用するといった傾向は見られないと言えます。

 

(参考)

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*こちらの話は参考程度に聞いてください。

「ぜ」の使用数が多いキャラクターを見ると、音変化の回数も多いことが分かります。手塚くんは「テニスの王子様」全42巻中、一度も音変化を用いたことがありません。逆説的に、「手塚国光は音変化を使用していないため、"ぜ"を使用するキャラクターらしくない」と言えるのかもしれません。明確に主張できなくて申し訳ありませんが、「”ぜ”は手塚くんらしくない」を補強する一要素くらいにはなるかな~と思って説明させていただきました。*14

 

▷▷仮説②の検証:過去との比較

ここまでの検証で、手塚くんの口調として「ぜ」がイレギュラーであり、「手塚国光らしくない」口調であるということが分かりました。では、逆に何故、原作では「ぜ」を使用しているのでしょうか?

以下は、中学1年時の手塚くんが使用した終助詞を中学3年時の手塚くんと比較した表です。

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「だ」は中3時にも頻繁に使用していましたが、「ぜ」は先述した通り1回のみ、「かな」に至っては中3時には一度も使用していません。中1から中3の間で、手塚くんの言葉遣いが変化していることが分かります。

また、中学1年時の手塚くんが「ぜ」を使用したのは、大石との会話で青学全国制覇の目標を口にした場面です。

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許斐剛テニスの王子様』17巻、集英社、2003(デジタル版:2012)、115頁

この中学1年時の回想は、大石が手塚くんの肘の怪我の理由を説明する場面で出てきます。「決着をつけようぜ」も跡部様との試合で肘の怪我が再発した場面で出た台詞です。
手塚くんが跡部様との勝負に際し「決着をつけようぜ」と”手塚国光らしくない”口調で宣言したのは、1年時に大石と誓った青学全国制覇への気持ちが蘇り、言葉遣いが当時に戻ったからではないでしょうか。

 

▷結論

「ぜ」という言葉遣いは、原作の時間軸では「決着をつけようぜ」以外では出現しておらず、手塚くんの口調としてはイレギュラーで違和感のあるものと言えます。そのため、OVAでは「手塚国光らしくない」として修正されたのでしょう。

では何故原作では「ぜ」を使用しているのか。その理由として、肘の痛みと共に青学全国制覇を誓った中学1年時の気持ちが蘇り、言葉遣いが当時に回帰したためである、と結論付けます。

以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました。

 

▷参考文献

許斐剛テニスの王子様』全42巻、集英社、1999〜2008

金水敏ヴァーチャル日本語 役割語の謎』、岩波書店、2003

金水敏役割語研究の展開』、くろしお出版、2007

金水敏『<役割語>小辞典』、研究社、2014

佐々木瑞枝(監修)・日本語とジェンダー学会(編集)『日本語とジェンダー』、ひつじ書房、2006

 

*1:そういうイメージでしたが、当該のシーンが収録されていたのは18巻/全42巻だったので、割と中期でした。

*2:アニメに関しては2019年2月26日現在、Amazonプライムで見られるので興味がある方は確認してみてください。本研究のシーンはエピソード67「最後の一球」で見られます。真田、柳、赤也が試合を観戦しているんですが、立海のカラーが決まってなかったのかジャージが赤だったりするのも味わい深いです。

*3:因みに、実写映画「テニスの王子様」では修正が行われていないそうです。ミュも1st夏冬、2nd、3rdすべてで原作通りの台詞が使用されているそうです。

*4:詳しい方は諸々「そうじゃなくない?」「そこは後年の著書でちょっと変化したくない?」という部分もあるかと思いますが、今回の研究ではそういう感じで使われてるんだな~と思っておいてください。

*5:以下の条件を使用しています。

・方言者は除外。

・同一キャラクターでも回想で1年以上の前の描写があった場合は別枠で集計した(「手塚(過去)」という感じ)。タカさんもバーニングモードは別で集計してある。

・複数人が同コマにいるなどで明確に発言者が分からないものは除外。
・敬語は終助詞が限定されるので除外。(「そうですね」とは言っても「そうですな」とは基本言わない、「そうだね」と言わないキャラクターでも「そうですね」ならば言う、等。)
・方言も除外したが、標準語訳がついているものに関しては集計した。(比嘉中はカッコで標準語訳がついていたので)
・イリュージョンや物マネは調査対象外とし、マネした方された方どちらの集計にも入れていない。
・発言とモノローグも分けて集計したが、その差による特筆すべき特徴はなかったので最終的にまとめている。

*6:手塚,手塚(過去),越前,大石,大石(過去),不二周助,菊丸,菊丸(過去),河村,河村(バーニング),乾,乾(過去),桃城,海堂,堀尾,加藤,水野,荒井,池田,林,桜乃,朋香,跡部,忍足侑士,芥川,向日,宍戸,鳳,樺地,日吉,滝,幸村,真田,柳,柳(過去),丸井,桑原,仁王,柳生,切原,千石,亜久津,南,東方,室町,新渡戸,喜多,壇,橘桔平,伊武,神尾,石田鉄,桜井,内村,森,橘杏,葵,佐伯,黒羽,天根,樹,木更津亮,首藤,福士,堂本,鈴木,田代,伊藤,山之内,木手,甲斐,田仁志,平古場,知念,不知火,新垣,白石,遠山,千歳,石田銀,忍足謙也,金色,一氏,小石川,財前,観月,不二裕太,赤澤,木更津淳,柳沢,金田,野村,季楽,北村,高瀬,源,羽生,昆川,津多,九鬼

(↑ネームドキャラだけど省いてしまっているのもいます……。集計項目には引っかからないキャラクターなので研究への影響はないですが、ファンの人ごめんなさい。)

*7:手塚,手塚(過去),越前,大石,大石(過去),不二周助,菊丸,菊丸(過去),河村,河村(バーニング),乾,乾(過去),桃城,海堂,堀尾,加藤,水野,荒井,池田,林,桜乃,朋香,跡部,忍足侑士,芥川,向日,宍戸,鳳,日吉,幸村,真田,柳,柳(過去),丸井,桑原,仁王,柳生,切原,千石,亜久津,南,東方,室町,喜多,壇,橘桔平,伊武,神尾,石田鉄,桜井,内村,森,橘杏,葵,佐伯,黒羽,天根,樹,木更津亮,首藤,福士,堂本,鈴木,田代,木手,甲斐,田仁志,平古場,知念,観月,不二裕太,赤澤,木更津淳,柳沢,金田,野村,季楽,北村,高瀬,源,羽生,九鬼

*8:以下の4か所。

・3巻「放せよ」
・17巻「遠慮するなよ」
・33巻「あまり調子に乗るなよ」
・41巻「無茶はするなよ」

*9:命令表現については「どこまでを命令と取るのか?」で悩んだため違うルールで取ったらもう少し違う結果になるかもと思います。「~してくれ」を命令と取るか?とか(今回の集計では省いています)。

*10:手塚,越前,大石,不二周助,菊丸,河村,河村(バ),乾,桃城,海堂,堀尾,加藤,水野,荒井,跡部,芥川,向日,宍戸,日吉,幸村,真田,柳,丸井,桑原,切原,千石,亜久津,橘,伊武,神尾,佐伯,黒羽,福士,木手,甲斐,平古場,観月,不二裕太,赤澤,桜乃,朋香,杏

*11:研究要旨では人数を39人としていたのですが、それは女の子たちを省いていたからです。発表でも言い忘れていました。要旨を購入された方すみません。比較内容的にやっぱり女の子も入れたほうがいいと思いますので入れます。

*12:例えば、首藤は集計に引っかかったのが全項目中で「ぜ」1回のみなので、データの上では語尾を「ぜ」としか喋らないキャラクターになってしまいます。

*13:真田の言葉遣いにおける特徴は手塚くんと非常に似ており、男女で絞っていない場合でも終助詞の内訳に類似が見られます。

*14:参考程度に聞いてほしいと言った理由は、表に乗せたキャラクター以下の順位になると音変化との相関にばらつきが出てくるからです。また、回数でなく割合順位付けした場合も相関関係にばらつきが出るため、根拠にするには微妙です。本当に参考程度ということで……。