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「青野くんに触りたいから死にたい」5巻感想

今更ですが感想!

個人的に、5巻は藤本くんとの断絶と美桜ちゃんとの友情がハイライトでした。

 

まず藤本くん!

藤本くんのシーン、あまりにもワーッ!となったので1回読むのを中断してしまった……。

「家族なんだからいつか分かり合える」という発言、本当に善良さと優しさから来ていて、来ているからこその断絶が……。相手に寄り添おうとする誠実さから出た言葉が返って断絶を深める残酷さよ……。

でもたぶん優里ちゃんも青野くんに指摘される前だとあの顔はしなかったんだろうなと思うんですよね。優里ちゃんは自分の家庭に「健全でしあわせな家族」フィルターを掛けていたので。ただ、優里ちゃん自身がまさしく5巻で言っていたように「青野くんに会う前を思い出せない」わけで、優里ちゃんは既に青野くんの指摘により家庭の問題を認識していて、気づいてしまった以上は不可逆なので、やっぱり藤本くんとはああなってしまうわけで……。

それと、これに関連して興味深いと思ったのが、青野くんが優里ちゃんの家庭の事情をダイレクトに理解できたのは「幽霊だから」という側面が大きいという点です。きっと、青野くんが目撃した場面を藤本くんが見ることはできないんですよね。刈谷家は他人が「いない」から家族としての正常をそのままやっていたわけで、仮に藤本くんが「いた」場合はあれそのままのことは絶対に起こらないわけじゃないですか。つまり、死んでいるからこそ何もかも共有し絆を深めていく青野くんと、生きていることが障壁となり分かり合えない藤本くんという……。本来の生死のアドバンテージが逆転している歪んだ構図だなと思いました。

個人的には藤本くんと優里ちゃんのカップリングをとても推しているのでどうにかなってほしいんですけど、今後もう一段階断絶を深める描写を挟むのか、環境が違っても歩み寄ることはできると示してくれるのか、どっちでしょうね。

 

そして美桜ちゃん!

龍平と優里ちゃんが一緒に別の空間に連れていかれた時、優里ちゃんが「美桜ちゃんならどうするか」を考えて動いたの、めちゃくちゃ深い友情でベロベロに泣けてしまった……。

「あの人ならどうするか」と他人を内包して行動するの、愛そのものじゃないですか。めちゃくちゃ深い友情が育っている。そんなに信頼のできる人に出会えてよかったね……。(感極まるオタク)

 

龍平くんの描き方も良かったですね。

あんな態度をとってるけど根はいい子だし本当は青野くんと仲良くしたいんだなというのが伝わる! 翠ちゃんのこともありもっとギスギスした兄弟関係を想像したので、ホッとしました。(別方向の地獄ではあるんですが……)

本心では兄を慕っている龍平くんと素でヤバい姉である翠ちゃんが対比になっていて、分かり合う余地のある家族と分かり合えない家族とを同作品で提示する多様性、椎名先生は創作が上手すぎないか?

 

5巻で大きく気になったところは上記の3つでした。あとは以下に羅列します。

 

・大翔が「一度間違えたらなかなか信用してもらえない」って言ってたの、この発言時点では立派やな〜と思っただけだったけど、5巻の内容を踏まえると「弟をちゃんと見ていなかったことで母親の信用を失った」経験から来ているのかなと感じて……つらい……。絶対にまだお母さんと溝あるよね。

・以前青野くんが優里ちゃんに対して「この家(優里ちゃんの家)の生贄は交代制なんだ」と発言していましたが、5巻のエピソードを踏まえて、青野くんは「交代制ではない生贄」をやっていたのか?と推測が立ってしまった。

・青野くんが誕生日の前日に死んだことを考えると、青野くんの方に何かしら(母親起因?)の呪いがかかっていて16までしか生きられないようになっていたのかな?

・藤本くんと優里ちゃんが学校で噂になってるというところから思ったことですが、2巻で藤本くんを探しに行った優里ちゃんが体育倉庫に閉じ込められる前、教室で藤本くんの居場所を教えてくれた女の子2人の態度に違和感があったのって、その噂のせいだったのかな?

 

以上!

今の話が終わったら最終章に入るらしいので楽しみ〜! 7巻とかで完結かな? 終わってしまうことは寂しいけど、すごくちょうどいいですね。ひとまずは次の6巻を待ちます。