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HiGH&LOWの秋が来た(『HiGH&LOW THE WORST』感想)

秋だ! 映画だ! HiGH&LOWだ〜!!!

ということで、『HiGH&LOW THE WORST』(以下ザワ)が10月4日に劇場公開ですね!!!!!!!!!


youtu.be


多くのハイローのおたくのご他聞に漏れず、私も実質公開日*1に既に視聴済みなわけですが、これがもうとっても面白かった! twitterは実質公開日以降ずっと「明日ザワが観たい」の声で溢れています!(弊TL調べ)

ハイローの続編として、純粋なエンタメ作品として、そのクオリティに打ちのめされたので、ゼッテェ観てくれよな!という気持ちでこれを書いています! みんな、ゼッテェ観てくれよな!


以下、ネタバレ感想です。

情報量が多い

見終わってまず思ったことが、「情報量が異常に多い」です。
いや〜〜〜詰め込まれている量がすごくないですか!? 映画3本分くらいありましたよ。『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』を初めて観た時のことを思い出しました。名前もちょっと似てるね。(THEのあたり)

この情報量の多さはバトルの多さでもあります。とにかく、大興奮のバトル組み合わせがこれでもかと詰め込まれていました。逆になぜこれが124分に収まっているんでしょうか? 不思議です。ハイロー七不思議のひとつかもしれないね。(山王七不思議のオマージュです)

バトルについてですが、もうですね、開始即、村山vs轟*2をジャパランでやってくれた時点でこの映画の素晴らしさは確定されました。開始10分かそこらだったと思います。ありがとう、ありがとう……。
その他主要なバトルについてはこの次のパワーバランスの項で触れますが、それ以外だと轟vs小田島をやってくれたのがちょっと尋常じゃないくらいテンションが上がりました。塩野くんがザワに出ると聞いてからめちゃくちゃ待ち望んでいた、LDHドラマの二次元作画眼鏡*3対決だよ〜! この対決を決定した人のこれからの人生が祝福されたものであってほしい。祈っています。

あとは、ひたすら「見たいもの」が提示され続けて涙が出そうになるんですが、更にその上の予想だにしないものまで提示されてびっくりしました。まさか鳳仙のことここまで好きになるなんて予想できなかったよ。鳳仙のスピンオフを作ってほしい。スピンオフのスピンオフ。どうにかなりませんか……。

パワーバランスの描き方が繊細

これはあらゆる方面に気をつかったんだなあということをヒシヒシと感じたんですけど、とにかく「誰が1番強いか」の組み立て方が入り組んでおり、映画内で結論が出ないようになっています。

まずドラマまでの前提として、全日最強の男は轟くんです。
ドラマ版ザワで全日は抗争状態となり、司一派、中・中一派、泰清一派が誕生し、全日の頭である轟一派を含め、各派閥の戦乱状態となります。
映画ではここに楓士雄が加わり、楓士雄をトップとした全日と鳳仙の抗争が勃発します。
ここでのポイントは、楓士雄は戦闘により全日の番長たる轟を軍門に降したわけではないということです。楓士雄はあくまで友好的に轟と交渉し、協定のような形で全日共同戦線を組織します。
そして始まった鬼邪高と鳳仙の全面戦争では、鳳仙が優勢でした。
鳳仙が鬼邪高をジリジリと追い詰め、このまま……というところで、定時が介入し両校の争いは終了となります。
この場面での定時は、場の支配者として、SWORDのOたる定時の「強者」の格を見せつけていました。絵的にも、地に伏す全日・鳳仙とは対照的に定時はダンプ上の高い目線に立っており、一段高みにいることが示されていました。
また、同時に、定時の介入により決着がつかなかったことで「全日が負けた」ことにもなっていません*4。ここがメチャクチャ上手い。クローズ側を立てつつも全日の決定的な敗北を描かず、更に定時の格を担保することでSWORDの伝説性を保つの、すごいよ……。

鳳仙・全日の組織間で描かれたこの勢力図は個人レベルでも同様です。
タイマンでも全編を通してバランス調整が非常に繊細なのですが、やはり言及すべきは最後の佐智雄vs楓士雄でしょう。
鳳仙のトップたる佐智雄と全日連合のまとめ役であった楓士雄との勝負は、佐智雄の勝ちでした。ここで改めて外部ゲストたるクローズに花を持たせています。また、勝負をすることで今作品における楓士雄の主人公性を強調しています。その上、轟を勝負させず可能性の言及のみに留めることで、鳳仙を立てたまま「全日トップの轟」の格を担保して来るの、上手すぎる……。SWORDと拳を交えたことのある轟は一段上なんですよね。轟の格を担保することが間接的にSWORDの格の違いを示すことに繋がっています。こうやってSWORDの凄さを描写してもらえるの、ハイローのおたくとしてとても嬉しい。

あとは、ドラマで清史が刺され、映画で泰志が殴られたのに「泰清弱いじゃん」にならないのも描写の妙ですよね。ハイローくんにこんな繊細なことができるなんて、わたし知らなかったよ……。

過去作の拾い方が丁寧

今回の映画は過去作を踏まえた描写が非常に多く、一連のシリーズを追っていた身としてちょっと泣けてくるくらいのサービス過多でした。

まずもって、まさか今回のキーアイテムとしてレッドラムを持ってきてくれるとは思わなかった……。
ザワドラマを観た印象では、今までのハイローの文脈を踏まえながらも完全に鬼邪高にスポットを当てた全く違う軸の話が展開するんだろうなと思ったら、レッドラムですよ!
既存のアイテムをここまでがっつり使ってくるなんて予想外で、めちゃくちゃテンション上がりました。

話の筋にも随所に過去作のオマージュのような箇所が見られました。
そもそも、大筋がまんまドラマ〜ザムの展開のリプライズなんですよね。ドラマで争っていた者たちが映画では協力して共通の敵に立ち向かう、という展開。
「敵側に行ってしまったかつての仲間を殴って連れ戻す」という展開も同じです。新太と楓士雄の喧嘩のシーン、完全に「帰って来てくださいよ」「俺たち、いつまでも待ってますから」でした。
ハイローはこういう「繰り返し」が上手いし、おたくはそういうものに弱い。ありがとうございます。

キャラクターも既存のキャラクターの焼き直しのような設定があり、オッとなりました。
上田兄妹はスモーキーとララを彷彿させるシスコンと妹の構図、オロチ兄弟は「寧ろ、何故SINが流れないのか?」と疑問に思うほど雨宮兄弟ポジションでしたし、誠司に至ってはモロにノボルでした。絶望団地の希望の星、山王の希望の王冠……。

轟の成長と村山の卒業

正直、ザワドラマの時点では、轟くんの焦燥がよく理解できなかったし、村山さんが轟くんに何を求めているかも分かりませんでした。
しかし、映画で楓士雄くんが現れて2人が手を取ったことにより完璧に目が開きました。轟に必要なものは対等な友達だったんや!!!!!!!!!!!! ライバルでも舎弟でもない、対等の友達!
大人である定時に相手をしてもらうことに躍起になっていた子供たる全日の轟くんが、ちゃんと同世代の人間と絆を結べたこと、爽やかな青春の予感が感じられてすっごく良かったです。轟くんと楓士雄の友情が結ばれたことで、これからの鬼邪高自体も良い方向に向かっていくんだろうな。

一方で、村山さんの青春は卒業という形で一旦終わりを迎えます。
ハイローのメインテーマは「変化の肯定」であり、その一環としてしばしば「大人と子供」の描写が強調して描かれています。
全日に対する定時は「大人」ですが、社会という枠組みで見るとSWORDの連中は子供から大人への過渡期にいます。それは、バイト先における村山さんの描写でも示されていました。今回の卒業によりSWORDのOから離脱することで、村山さんは「大人」としての人生に本格的に踏み出します。
それは決してネガティブなことではありません。「青春の終わり」の向こう側にもキラキラしたものはあります。変わっていくことと仲間を失うことは全然違うし、変化するための挑戦がサヨナラから始まることもあるし、夢を叶えることができる大人は楽しいのです。

不満点:物語の軸

ザワは、1本のエンタメ映画としての完成度も、HiGH&LOWシリーズ作品としての情報の拾い方もメチャクチャ良い、本当に最高のエンタメです。そのほぼ唯一の不満点*5は「楓士雄の物語」だったことです。
楓士雄くんに不満があるわけではありません。ザ・少年誌の主人公!と言った雰囲気の魅力的なキャラクターです。壱馬さんの演技力が堪能できて大変ありがたかったですし、映画を通して楓士雄と幼馴染への物語に没入し、堪能させていただきました。あの映画そのものに不満があるわけではないのです。
ただ、ありがたい供給はありつつも「鬼邪高の物語」が「楓士雄の物語」のサブな印象はありましたし、やっぱりハイローのおたくとして、このクオリティの話を村山さんか轟くんを主人公でやってほしかった……という気持ちがどうしてもあります。
勿論、LDH制作である以上主役は内部から出す以外なく、メインのキャラクターが外部の役者のみで構成された鬼邪高のスピンオフがこの規模で作られたこと自体がそもそも奇跡のようにありがたい話であることは分かっています。ハイローをこの先10年続けてもらう強固なコンテンツとするにあたってもこのやり方を否定するつもりはありません。
なので、これは丸っきりオタクの駄々であり、我儘です。ごめんなさい。本当に映画そのものはめちゃくちゃ面白くて文句なしだし楓士雄くんはサイコーの主人公です!!!! 本当に!!!!!


△▼△


最後ちょっと湿っぽくなっちゃいましたが、『HiGH&LOW THE WORST』はマジでメチャクチャ面白い、「ここまで面白くて大丈夫ですか?」ってくらい面白い化け物級エンタメです。わたしは多分5回は観る。ここに書いたことだけじゃ全然言及が足りてない(主人公組のことについてはほぼノータッチだし鳳仙にも全然言及できてない)し、本当にメチャクチャ情報量が多くてメチャクチャ面白いので……。
ハイローのおたくもそれ以外も、2019年のホットコンテンツ・『HiGH&LOW THE WORST』をよろしくね!!! 映画館で会いましょう!!!

*1:LDH(EXILEの事務所)が映画を作成する際に行われるライブつき試写会の俗称。大体の場合は公開日の前月あたりに開催されるため、おたくは公開日が決まると実質公開日を逆算する。 例:「今度の映画、10月公開ってことは9月には観られるね」

*2:完全に蛇足なんですが、村山vs轟のタイマン、闘技場のクロロvsヒソカ戦っぽくなかったですか? 村山さんの役作りの一部にクロロ=ルシルフルが入っていることを考えると、結構本当に参考にしているのかもしれない……と思っています。

*3:小田島有剣自体も二次元作画眼鏡なのですが、この場合はドラマ『PRINCE OF LEGEND』の誠一郎のことを指しています

*4:HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』のロッキーVS蘭丸を観た人間には分かってもらえると思うけど、どんなに優勢に見えても最後の瞬間までどちらが勝つか分からないからね。

*5:あとは、やっと頭を張る気持ちになった司さんにろくに見せ場が訪れることなく楓士雄がトップになってしまったことについては「それはなくない!?」とは思ってますが、司さんは幸せそうなので、わたしから言えることはないよ、ウン……。