新たな自分でいっぱいにするよ

感想は自分のためのエンターテインメント

ちはやふる最終回感想

ゴリゴリにネタバレです!



筆者の立場:ちはやふるは単行本派でずっと追っていた。新が推し。真島太一は裏主人公(※)として応援していた。

※裏主人公…作中で主人公と別軸で成長が描かれ、弱さを克服するキャラ。わたしが勝手にそう呼んでいる。太一以外では、フルバの由希、BASARAの浅葱、モブサイの霊幻新隆等。



最終回の良かったところ

まず良かったところから!
最終回で千歳と千早のくだりを入れてくれたのはめちゃくちゃよかった〜!
ちはやふるって、お姉ちゃんの夢を自分の夢と同一視していた千早が、自分自身の夢を獲得して達成する話なので。
作中でもずっと、千早はかるたが大好きで全力だけど、家族間ではどうしても軽んじられて、特にお姉ちゃんに認めてもらえなくてつらい、という描写をやってました。そのはじまりであるお姉ちゃんと通じ合うエピソードを最終話で出してくれたのは本当に良かった。
1話で夢のはじまりとお姉ちゃんからの自立、最終話で夢の達成とお姉ちゃんからの承認、と構成もとても綺麗。すごく好き!

千早と新と真島太一の話

で、あの……千早と新と真島太一の話なんですけど……。
申し訳ないんですけど、正直あの……納得が……いっておらず……。

あの部室のシーンまで本当に何にもそんな気配を感じていなかったので、部室で会話してるところで初めてちょっと……おや?????となったっていうか……。まさかそんな……?って。そしたらああいう結末になり……。
あ…………あった?かな??? そういう話の流れ。
ごめんなさい、わたしには読み取れていませんでした。

なんでこんなびっくりしちゃったのかと言うと、だって、千早って新のこと一生好きって言ったじゃないですか?(17巻92首)
「私は一生かるたが好きで新が好きなんだ」って、千早がかるたと並べて好きって言うならそれは本当に一生好きってことじゃないかと、そう思ってたんですけど……。
もちろん好きという言葉は恋愛に使われるだけではないので、最終的にああいう展開になったということは結局は千早の新への気持ちは恋ではない敬愛とか友愛とかの好きってことなんだろうと思うんですけど、でも……でも……ありましたか? そういう描写。わたしは気づかなかったよ……。
「一生新が好き」のあとに富士崎の合宿で「かるたが強くないと目の前にすら座れない」とも言っていて(17巻93首)、これは千早も明確に恋バナとして認識していたので、少なくとも千早はこの時は新のことを恋として好きだったはずだと思うんです、作品描写として。
いつ違くなったんだろう……分からない……分からないので千早が新にめちゃくちゃ思わせぶりな態度をとった挙句太一と付き合ったように感じてしまい、悲しい……。
わたしは千早のこと好きだったし、好きだし、嫌いだと思ったことなかったし、ずっと応援していたし、夢が叶ったのも嬉しくて、だからこそ最後の最後でこんなふうになってしまい、千早にマイナスの感情を抱いてしまったことが悲しくて落ち込んでいます。
だってあれ、ひどくないですか? わたしがあんなフラれ方したらベッコベコに傷ついてへこむと思う。付き合う流れだったと……本当にずっとそう思っていたので……。新はわたしではないのでそういう流れだと思ってなかったようだしそんな傷ついてないが……。

千早が新に返事したくだりでなんて言ってたか改めて読み返すと、「今の気持ちとしては、世界一になりたい」ということを言っています。確かに好きとかそういう話はしていない。
つまり「俺は今年こそ甲子園に行くから今は野球のことしか考えられない」という趣旨の話であり、新も「じゃあこの話は甲子園が終わったあとでね」と了承しています。
ただ、蓋を開けたらいつの間にか別の人と付き合いました〜となっており、それは……それはやっぱりひどくない???
ていうか新の視点に限定したら思わせぶりでなかったとしても、作中の流れとしては新と千早の描写だったじゃんとやっぱり思うんですね。百歩譲って「一生好き」が20巻以上前の描写だから今は変化しており根拠として薄いとしても、最終回の数話前(241首)で新に「好きな子が後ろで頑張ってるんです」とか言わせてるわけで、ここ本当に、ラストが分かって読むとグロすぎる。末次先生、何故こんなことを……。

「28で隣にいることを目指す」という新の発言も、新派へのフォローなのかなと受け取っているのですが、そんな……このうえ千早がまた(※わたしは千早の気持ちを恋だったと思っているのでこのような表現になります)新に乗り換えたりしたら、それこそあの三人の関係泥沼ですよ! やだよ!

わたしは真島太一をずっと応援していたし、真島太一に早く大丈夫になってほしかったし、彼の幸せを願っていたので、太一が千早とくっつくこと自体には異論はありません。実際お似合いだと思うし、太一が幸せなのは嬉しい。
かなちゃんがガッツポーズしたのだって、かなちゃんにとっては新はよく知らない遠くの人で、友だちである太一と千早が結ばれれば良いとずっと願っていたわけで、その気持ちはわかります。わたしだってかなちゃんの立場だったら諸手を挙げて喜んでいるでしょう。
問題は千早の方で、そこにロジックはあったかな……!?
ちゃんとレールが敷かれてたならこんなふうには言わないです。わたしは新が好きだけど、話の処理によっては太一とくっつくのもいいなというのは以前から言っていたので。太一の気持ちが叶うこと自体はすごく嬉しい。
だから、その処理が、個人的にはぜんぜん納得いっていないという話になります。

本当に、「一生って言ったじゃん」というのが、ある。
単に恋愛レースの話じゃなくて。
綾瀬千早というキャラクターは、かるたが大好きで全てを懸けていて、職業だってかるたを軸に選んで、人生丸ごとかるたのために、っていうひたむきな情熱を持っていると、一途でまっすぐだと、そういう話を15年間50巻かけてやってきたのに……。
意地悪な言い方になってしまい心苦しいのですが、千早がかるたと並べて好きだと語っていた新からあんな簡単に(とわたしは読んでしまう)心変わりするなら、かるたのことも来年くらいにはどうでも良くなってたりするのでは?とか、そういうこともちょっと考えてしまうし、否定しきれないと思ってしまう……。そういう次元の、作品の根幹のテーマ性を否定する展開に感じています。
わたしの読み方が偏ってただけで読み返したら納得できるかなあ、と序盤から読み返しをしているのですが、千早のかるたに賭けるひたむきさや情熱の描写が出てくるたびに、「一生好き」と心変わり(とわたしは感じている)のことが思い起こされて、反射的に「嘘じゃん」と思ってしまって、悲しい……。いやだよー! ちはやふるをこんなふうに読みたくなんてなかった。

新刊が出るたびにずっと、「以前読んでいた人たち、真島太一の青春を見届けてください。真島太一はずっと頑張っているから」と言っていました。でも最終話を読んでから言えていません。

ちゃんと読み返したら納得できるだろうか。
無理やり納得したいわけではないけど、できることなら「確かに」と納得してちゃんと祝福したい。
最終話のラストを読む直前まで本当にずっと好きだったから、今まで好きだったこともぜんぶ辛くなってしまうのは悲しいです。
感情のことなので分かりませんが、そう言えるようになったらいいなあと思っています。祈っています。


(追記)
触れ忘れていたので追記。


末次先生のこのウイルス対策の漫画を読んだ当時、めちゃくちゃにショックを受けました。
だって真島太一の恋はもう叶わない(と当時は思っていた、確か最新が43巻だった時くらい)のにこんなん言わせるの非道すぎるから……。
このラブ要素ってファンサービスだと受け取ったんですけど、千早に振られて傷ついてもがいてる太一に、読者のトキメキとかそういうものの為にこんなこと言わせるのめちゃくちゃ酷いよー!と思って……。
でも最終的な決着がああなった以上、これも末次先生の中では自然だったのかもしれませんね。非道を強いられる太一はいなかったので良かったです。