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「青野くんに触りたいから死にたい」5巻感想

今更ですが感想!

個人的に、5巻は藤本くんとの断絶と美桜ちゃんとの友情がハイライトでした。

 

まず藤本くん!

藤本くんのシーン、あまりにもワーッ!となったので1回読むのを中断してしまった……。

「家族なんだからいつか分かり合える」という発言、本当に善良さと優しさから来ていて、来ているからこその断絶が……。相手に寄り添おうとする誠実さから出た言葉が返って断絶を深める残酷さよ……。

でもたぶん優里ちゃんも青野くんに指摘される前だとあの顔はしなかったんだろうなと思うんですよね。優里ちゃんは自分の家庭に「健全でしあわせな家族」フィルターを掛けていたので。ただ、優里ちゃん自身がまさしく5巻で言っていたように「青野くんに会う前を思い出せない」わけで、優里ちゃんは既に青野くんの指摘により家庭の問題を認識していて、気づいてしまった以上は不可逆なので、やっぱり藤本くんとはああなってしまうわけで……。

それと、これに関連して興味深いと思ったのが、青野くんが優里ちゃんの家庭の事情をダイレクトに理解できたのは「幽霊だから」という側面が大きいという点です。きっと、青野くんが目撃した場面を藤本くんが見ることはできないんですよね。刈谷家は他人が「いない」から家族としての正常をそのままやっていたわけで、仮に藤本くんが「いた」場合はあれそのままのことは絶対に起こらないわけじゃないですか。つまり、死んでいるからこそ何もかも共有し絆を深めていく青野くんと、生きていることが障壁となり分かり合えない藤本くんという……。本来の生死のアドバンテージが逆転している歪んだ構図だなと思いました。

個人的には藤本くんと優里ちゃんのカップリングをとても推しているのでどうにかなってほしいんですけど、今後もう一段階断絶を深める描写を挟むのか、環境が違っても歩み寄ることはできると示してくれるのか、どっちでしょうね。

 

そして美桜ちゃん!

龍平と優里ちゃんが一緒に別の空間に連れていかれた時、優里ちゃんが「美桜ちゃんならどうするか」を考えて動いたの、めちゃくちゃ深い友情でベロベロに泣けてしまった……。

「あの人ならどうするか」と他人を内包して行動するの、愛そのものじゃないですか。めちゃくちゃ深い友情が育っている。そんなに信頼のできる人に出会えてよかったね……。(感極まるオタク)

 

龍平くんの描き方も良かったですね。

あんな態度をとってるけど根はいい子だし本当は青野くんと仲良くしたいんだなというのが伝わる! 翠ちゃんのこともありもっとギスギスした兄弟関係を想像したので、ホッとしました。(別方向の地獄ではあるんですが……)

本心では兄を慕っている龍平くんと素でヤバい姉である翠ちゃんが対比になっていて、分かり合う余地のある家族と分かり合えない家族とを同作品で提示する多様性、椎名先生は創作が上手すぎないか?

 

5巻で大きく気になったところは上記の3つでした。あとは以下に羅列します。

 

・大翔が「一度間違えたらなかなか信用してもらえない」って言ってたの、この発言時点では立派やな〜と思っただけだったけど、5巻の内容を踏まえると「弟をちゃんと見ていなかったことで母親の信用を失った」経験から来ているのかなと感じて……つらい……。絶対にまだお母さんと溝あるよね。

・以前青野くんが優里ちゃんに対して「この家(優里ちゃんの家)の生贄は交代制なんだ」と発言していましたが、5巻のエピソードを踏まえて、青野くんは「交代制ではない生贄」をやっていたのか?と推測が立ってしまった。

・青野くんが誕生日の前日に死んだことを考えると、青野くんの方に何かしら(母親起因?)の呪いがかかっていて16までしか生きられないようになっていたのかな?

・藤本くんと優里ちゃんが学校で噂になってるというところから思ったことですが、2巻で藤本くんを探しに行った優里ちゃんが体育倉庫に閉じ込められる前、教室で藤本くんの居場所を教えてくれた女の子2人の態度に違和感があったのって、その噂のせいだったのかな?

 

以上!

今の話が終わったら最終章に入るらしいので楽しみ〜! 7巻とかで完結かな? 終わってしまうことは寂しいけど、すごくちょうどいいですね。ひとまずは次の6巻を待ちます。

 

 

第3回テニスの王子様研究発表会 聴講感想

2019年2月23日に参加した第3回テニスの王子様研究発表会の感想です。

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おたまさんがご用意してくださったキャンディフラワー

以前から存在を知っていて気になっていた「テニスの王子様研究発表会」に思い切って参加することにしたのが2018年11月の末、その後調べたり書いたり修正したりしていたらあっという間に当日を迎えました。主催のぽるかさんの丁寧さ・準備の手厚さには感謝してもし足りません。本当にお世話になりました。

当日は「どんな雰囲気なんだろう? みんなすごくテニスに詳しいんだろうし、ついていけるかな」という不安もチョットありましたが、いざ参加してみると一日中あったかほっこり空間でみなさんめちゃくちゃ優しくてもうびっくりするほど楽しかったです!

 会終了後のツイート。超エンジョイしている。

 

各発表のスライドは主催のぽるかさんが サイトで第3回まで公開してくださっています。

 

 

以下、各発表に関する感想をざっくりです。

 

おんねこさん:糸目・閉じ目にみる系譜~柳蓮二の負う「個性」~

トップバッターのおんねこさん! 素晴らしい司会者様でもあります。「こういう雰囲気なのか〜」と勉強させていただきました。

糸目の要素として「雑魚っぽい」という印象がなかったのでへえーとなりました。北斗の拳のモブとからしい。へえー。「東洋の作品以外では糸目キャラが出ない」というのもそうなんだー!となりました。興味深かったです。

また、質疑応答時に「不二先輩が舐めプ(仮)している時は目を閉じて、本気になると目を開けるという描写は、''雑魚''要素と関連があるように思える」と意見が上がり、別の方から「舐めプと言えば、南次郎が井上さんとの試合の時にハンデで目を閉じてましたよね」と繋がったの、発表会という形式を取った意義を肌で感じてビリビリ来ました。すごい! 発表会って楽しい!

 
めしごさん:白石蔵ノ介はなぜ絶頂するのか~ギリシア哲学から見るエクスタシー~

作中舞台装置としての各校の役割という観点のお話と、"完璧なテニス"と「エクスタシー」との間で白石が自己矛盾を起こしているというお話が面白かったです。

プレゼンもゆったりした話し方でとても聞きやすかった。自分が早口喋りタイプなので尊敬です。

あとパワポがすごく綺麗。開始前の発表者集合時にスライドを見て他の参加者の人が「パワポのバイブル」って言ったのウケました。


るく:関東氷帝・手塚vs 跡部戦「決着をつけよう'' ぜ''」の消失に関する考察 

わたしです。

内容はこちらの記事にまとめています。

 

lookmusical.hatenablog.com

 
トモエさん:テニスの王子様におけるスポーツマンシップ- 王子様たちのテニスにおける価値観ついて 

テニスの王子様における倫理基準について、観戦しているキャラクターの反応から読み解く。

テーマは「スポーツマンシップ」なんですが、個人的にはむしろ能力バトルとしてのテニスの王子様の法則性を紐解いているように感じ、発表の途中からずっと頭の中で「カード!ドロー!(ジャーッジャジャジャージャジャジャーッ)」って流れてた。

これはセーフなのか、じゃあこっちは?って考えてみるの楽しいなーと思いました。

参考文献の『スポーツ倫理学講義』はメチャ面白なのでオススメです。スポーツのファンについての言及もあるよ。


チョコバナナさん:雅治のイリュージョン

まっさはるの〜イリュージョ〜ン。

終始、「そんな……えっ? そんな……えっ!?」みたいな面白さでした。完全にわたしの意識の外側にあったものをガツッと提示されてオロオロしてしまった。

仁王のイリュージョンに対する周りの反応から、身体的イリュージョン→肉体的イリュージョンへの移り変わりまでとにかく気持ちよくまとめられていて面白さでボッコボコになりました。イリュージョンのことなんとも思わず受け入れていたんですけど、こんなちゃんとした法則性があったんだ!?!?となり、すごい……広ぇーや全国……という気持ち。

あとプレゼンもめちゃくちゃ上手かったです。べしゃりがお上手。


市川芯子さん:片眼の真田、その後~少年は神話になったか~

以前から過去発表(「片眼の真田~供物から神の域へ~」)のスライドを拝見していたので今回その後のお話が聞けてとっても嬉しかったです!(質疑応答で出た「幸村の好物は魚」に関しても前回研究で触れられてましたね)

黒龍二重の斬の龍というモチーフについて、龍は鯉から来ている→鯉といえば神社にいる→神社=神の供物との関連、というロジックが決まりすぎて気持ちよくなっちゃいました。

締めが「シングルスでの試合が待たれる」でしたが、次号のSQで真田のシングルスが始まる予定なので、ドキドキしてしまう……。


ぽこさん:ホストの王子様 ─その実態および意義の検討─

何でか当日まで「ナンパの王子様」と混合していてその話だと思っていたら実在のホストのみなさんについてのお話だったのでびっくりしました。(説明読んでたはずだったんですが……)

発表中に切原赤也さん(ホスト)の誕生日が今日だと気づいて会ったこともない切原さん(ホスト)をその場でお祝いしたの、すごく楽しかったですね。一体感があった。

質疑応答で実際に該当の王子様(ホスト)に会ったことのある人が複数名名乗り出てきて盛り上がりました。越前リョーマはホストの神。


寿甘あずさん:二次創作作品を閲覧する、または自身で行う個人における跡部景吾の呼称と当人の好むカップリングの相関

BLについて全く無知なので新鮮なお話でした。跡部様をリトマス試験紙にしようという発想が面白い。

CPの左右により呼び方に差異が出るかとかも気になるな~と思いました。(もしかして発表で触れてたらすみません…)

滝さんとのCPを推してる人だと跡部様を「景吾くん」呼びしがちというの面白かったです。


らいむさん:「菊丸は手塚が苦手」考

これすごかったんですよ! とにかく情報が潤沢! 調査対象が原作、アニメ、テニラビ、テニミュと多岐に渡っており、各メディアの画像を使用した求心力のある発表スライドに加え、何と漫画・アニメ・テニラビの会話ト書きが別綴じで付いていた! 付録ですよ付録! 元ちゃおっ子だから付録に弱いんだよ〜、すごいよ〜。

アニメにもテニラビにも詳しくなくて原作とアニメで試合展開が違うことを知らなかったので勉強になりました。キャストがどこまで設定を意識しているか?というお話も興味深かったです。写真の写り方とか結構露骨で笑ってしまった。


わーいさん:なぜ、テニミュのチケットを何度も何枚も買ってしまうのか~テニミュの人気をマーケティング視点から紐解く~

資料がプロでした。講演会か企業説明会のようだった……。

「エンターテインメントの観客参加型化による風潮でテニミュ運動会が開かれないんじゃないか」という指摘が、「分かるけど!運動会やってほしい!!!」というご本人周辺の意見も含めて面白かった。

個人的な話になりますが、学生時代に2.5次元舞台のマーケティングに絡めた論文を書いた経験があり、その時「ここらへんは今発展途上だし今後変わるんだろうな(ので論文では触れないでおこう)」と考えていた俳優→2.5次元舞台や2.5次元舞台→他の2.5次元舞台のサイクルについての言及もあり、ものすご〜〜〜く興味深かったし尊敬いたしました。


かやのさん:スタッフページから見るテニミュ

お恥ずかしながらスタッフページを認識したことがないレベルだったので「ここにこんな潤沢な情報が!?」とびっくりしました。自分の知らない情報をまとめたものを聞かせていただけるのすごく楽しい。

テニミュやスタッフについて無知なので具体的に語る言葉も持ち合わせてなくて恐縮なのですが、テニミュに詳しい人の話を聞くのがとっても好きなので本当に聞いてて気持ちよかったです。この会を通して気づきましたが、面白い考察を聞くのは気持ちいい!


ののさん幸村精市ルノワール

残念ながら当日はご病気で欠席されていましたので、要旨のみ読ませていただきました。ルノワールの病気のことを知らなかったので、へー!そんな関連が!となりました。後日スライドも掲載してくださる予定だそうなので楽しみです。


ぽるかさん:いつか王子様が

「王子様」という概念についてのお話。多岐に渡るテーマをガンガンに聞かせていただいた後にこの包括的なテーマで締めるの、センスのいいフルコースみたいで幸せでしたね……。

テニスの王子様」というタイトルが「ヒカルの碁」のヒットを受けた流れじゃないか(これは多分質問者の発言だったかな?)とか、「テニスの王子様」以後しばらく「○○の××」というタイトルがジャンプ作品に出なくなったのはテニスが流行りすぎたからではないかとか、ジャンプ作品くくりでの視点が個人的に新鮮でした。

あの、「王子」の2つの要素が合流するところにテニスの王子様が位置しているスライドがすごく好きなんですよね……スライド公開楽しみ……。

 

 

以上、ざっくり感想でした。

感想、「面白い」「気持ちいい」ばっかりですが、素晴らしい考察を聞いた感情はその2つに集約されるんですよ……。本当に楽しかった。発表が面白いのはもちろん、聴講者の方から出る質問も面白いものばかりで、あんなに、あんなに楽しいことが……人生って楽しい……。(よろよろ)

また、発表会後に懇親会があり、会場の使用時間まで残った人でいくつかのグループに分かれてお話しました。そこでも面白い話がドバドバ出てきてすごかったですね。「手塚国光」が越前リョーマに次ぎテニミュ歌詞に頻出なのは7音(気持ちよく感じる音数らしいです)だからじゃないかとか、青学は7音の名前多いですよねとか、比嘉の全国出場が26年ぶりというのは26年前に晴美ちゃんの代で全国に行ったんじゃないか説とか……。

本当に1日中ずっと楽しくて、参加して良かったし、こんな楽しいことがある東京ってすごいな!!!と思いました。

この会を開催してくださった主催のぽるかさん、運営のおんねこさん、市川さん、おたまさん(おたまさんも運営ですよね?勘違いでしたら申し訳ないです…)には感謝でいっぱいです。ありがとうございました。準備段階から当日まで本当に丁寧で素晴らしく、今日まで頭が下がり続けております。隅々まで心遣いが行き届き、丁寧で円滑で快適で、熱意と優しさとホスピタリティに溢れ……わたしの語彙ではこの素晴らしさも感謝も上手く表現できずに歯痒いのですが、本当にすごかった! すごかったんです!!! 心からありがとうございました!!!

第4回も前向きに検討しますとのことで、もし実現したら是非また参加させていただきたいなあ~~~と思います。

 

運営のみなさま、発表者のみなさま、聴講者のみなさま、みんなみんな、本当にありがとうございました。

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当日使用した名札

 

追記:

発表会用の掲示板にわたしの発表の感想を書き込んでくださった方々もありがとうございました!

とっても嬉しくてありがとうと言いたかったのですが、わたしの発言で掲示板を埋めてしまうのも申し訳なかったので返信を遠慮してしまいました。

これを読んではいないと思いますが 、もし読んでいたら、ありがとうございます。嬉しかったです。

関東氷帝・手塚vs跡部戦「決着をつけよう”ぜ”」の消失に関する考察 - 第3回テニスの王子様研究発表会発表内容

 

2019年2月23日に狸穴さん(twitter:@mamianical_info)主催の「第3回テニスの王子様研究発表会」で発表した内容です。

会の概要や発表タイトル一覧はこちら→ 第3回テニスの王子様研究発表会 | Peatix

 

発表者(わたし)はまったく言語の専門でも専攻でもなく、それっぽいことしてるだけのゆるふわ発表資料なのでゆるふわで読んでいただけるとありがたいです。

また、スライド及び記事内で原作の画像を使用しておりますが、出典を明記し引用の範囲内で取り扱っているつもりです。以上、よろしくお願いいたします。

 

▷発表スライド(ざっくり把握したい方はこちらだけでも分かるかと思います)

 

▷研究のきっかけ 

2018年に新作OVAテニスの王子様 BEST GAMES!! 手塚vs跡部」が作成されました。その劇中で、手塚くんの台詞「決着をつけようぜ」が「決着をつけよう」に修正されていることに気がつきました。手塚くんが珍しく好戦的でたいへん好きな台詞でしたので変更されたことを残念に思い、どのような意図でこの修正が行われたのか理由を探ってみることにしました。

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該当のシーン:許斐剛テニスの王子様』18巻、集英社、2003(デジタル版:2012)、44頁

 

▷仮説

研究を進めるにあたり、最初に2つの仮説を立てました。

 

仮説①:連載当時から現在までの時代の変化に伴い、キャラクターの言葉遣いが変化した。

仮説②:当該の台詞が手塚のキャラクター性にそぐわないと判断された。

 

▷仮説①の検証

テニスの王子様』の連載開始が1999年であることから、OVAが作成された2018年までの年月で世間一般の言葉が移り変わり、創作物上の言葉遣いも変わったのではないかと仮定しました。古い少女漫画でよくあった「だわ」「なのよ」も最近の少女漫画では使われないことが多くなってきたように、「ぜ」もオールドファッションなのかなということです。あるいは、関東氷帝戦はそこそこ初期の試合*1であるため、長く続く連載の中で手塚くんの口調が変化した可能性もあります。

しかし、調査する中で、TV放送*2のアニメシリーズ『テニスの王子様』でも同様の台詞修正*3が行われていると分かりました。その上、この頃のTV放送は超過密スケジュールだったようで、当該のシーンの本誌掲載からTV放送までわずか4カ月足らずしかありませんでした。

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よって、時代の変化もキャラクターの変化も生じていないということになります。

以下、仮説②について掘り下げていきます。

 

▷仮説②の検証

仮説②(手塚のキャラに合わないんじゃないか説)、この研究テーマを選んでから「ぜ」問題についてざっと調べましたが、ファンの意見もおおむねこの説に類似した感じでした。「手塚っぽくないからかな?」ということです。では、具体的にはどこがどう「手塚っぽくない」のでしょうか? それを明確にするために「手塚っぽい話し方」について探っていきたいと思います。手塚らしい話し方を探れば、そこから外れている=手塚らしくない、とできるはずだからです。

しかしその前に、「キャラクターはキャラクターらしい話し方をする」と決めつけていいのでしょうか? 人間は必ずしも一貫した話し方をするとは限らないはずです。

この問題について、本研究では前提として役割語の観点を用います。役割語とは、大阪大学金水敏教授が2003年に提唱した比較的新しい考え方で、ざっくり言うと、「創作物において、話し手のキャラクター性を描写する特定の言葉遣いのこと」*4を指します。 つまり、「ワシの若い頃はのう」と発言しているのは老人、「あら嫌だ、お里が知れてよ」と発言していたらお嬢様なんだなと分かるように、言葉遣いがキャラクターのパーソナリティを構築し想起させる重要な一要素であるということです。

テニスの王子様」ではキャラクターたちはしばしば特徴的な言葉遣いをします。仁王の「プリッ」、柳沢の「だーね」、観月の「んふっ」、丸井の「だろぃ」などです。「テニスの王子様」は役割語的な観点により規定されたキャラクター描写をされていると言えます。

以上のことから、「手塚国光は、手塚国光というキャラクター性を表現する言葉遣いをしているはずである」という前提を元に研究を掘り下げていきます。

 

仮説②の実証のために以下を集計しました。

 

・集計対象:『テニスの王子様』全42巻

・集計項目:①終助詞:ぜ、ぞ、な(非命令)、だろ、かよ、か(疑問)、ね、よ、の(非疑問)、かしら、わ、だ、かな、か(非疑問)、の(疑問) ※方言と敬語は除外

      ②指示表現:命令型、確認型

      ③音変化(例:「うるせえ」「何スか?」)

・調査対象:中学テニス部員 (方言話者は除く) + 桜乃、朋香、杏

・調査人数:100人

 

調査対象や調査方法*5については色々細かくルール決めがあるので気になる人は脚注を読んでください。ルールを用いて絞ったネームドキャラクターを数えるとちょうど100人*6集計した結果、集計項目に1以上の該当があったキャラクターは82人*7です。

集計項目の②と③に関しては結論には直接関係がないのでおまけくらいの要素だと思っていてください。

 

▷▷仮説②の検証:手塚の言葉遣い特徴

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手塚くんの使用する終助詞の内訳です。「だ」がもっとも多く、次が「な」であることが分かるかと思います。問題の「ぜ」に関しては該当の台詞1回のみの登場でした。「ぜ」の使用はイレギュラーであると言えます。

これは余談ですが、手塚くんの口癖である「油断せずに行こう」からも分かる通り、そもそも手塚くんは「行こう」「しよう」のような言い切りの形が多いんですよね(発言数のデータは取ってないので多いというのは集計していてわたしが感じた印象ということになってしまうのですが)。それと、「ね」は一度も使用されておらず、「よ」も使用されたのは4回*8のみです。その4回も全て、命令表現+「よ」の命令形に付随する使用であり、「だよ」のような使われ方はしていません。

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また、指示における命令表現*9の回数が登場人物中もっとも多いというのも特徴でした。これは主人公校に所属し出番が多いこと、部長という立場であることも要因であると思われます。

 

▷▷仮説②の検証:他者との比較

日本語と言えば言葉遣いに男女差が現れやすい言語です。「女性語」「男性語」なんて言うとこのご時世ちょっと引っ掛かりを覚えてしまったりもしますが、周囲の人間の言葉遣いを思い浮かべても、昔ほどではないとは言えやはりまだまだ男女で言葉遣いに違いがあるのではないかと思います。「ぜ」は一般的に男性が使う言語と言われています。所謂「男性語」を「力強い・粗野」、「女性語」を「柔らかい・丁寧」な言葉であるとして、登場キャラクターたちの傾向を比較してみます。ここでの集計項目は以下です。

 

・「男性的」な終助詞:ぜ、ぞ、な(非命令)、か(疑問)

・「女性的」な終助詞:の(非疑問)、よ、ね、かな

・調査対象:本研究で集計した終助詞に集計数20以上の該当が見られる中学生プレイヤー+桜乃・朋香・杏

・調査人数:42人*10*11

 

終助詞について、集計した中で「男性的」「女性的」傾向が強いものを同数抜粋しました。調査対象を上記の絞り方にしたのは、ある程度のサンプルがないと偏り*12が出るからです。

以下が抜粋した項目を元にした散布表です。
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(一応拡大したら全員分の名前も確認できるはずです。)

斜めに走る線が「男性的」「女性的」のちょうど真ん中です。この線から遠く、縦軸・横軸に近いほど終助詞における「男性的」「女性的」傾向が強いということになります。手塚くんはかなり「男性的」に寄っていますね。

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上記の表で、手塚くんと比率が近い(つまり男性比が強い)キャラクターを抜粋しています。この4人と内訳を比較してみます。

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見た感じ、一定の傾向は見られないかと思います。真田*13と柳は比較的手塚くんと似た印象を受けますが、ジャッカルとバネさんは手塚くんと全く違うしバラバラです。

「男性的」な話し方をするから「ぜ」を使用する、といった傾向は見られないと言えます。

 

(参考)

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*こちらの話は参考程度に聞いてください。

「ぜ」の使用数が多いキャラクターを見ると、音変化の回数も多いことが分かります。手塚くんは「テニスの王子様」全42巻中、一度も音変化を用いたことがありません。逆説的に、「手塚国光は音変化を使用していないため、"ぜ"を使用するキャラクターらしくない」と言えるのかもしれません。明確に主張できなくて申し訳ありませんが、「”ぜ”は手塚くんらしくない」を補強する一要素くらいにはなるかな~と思って説明させていただきました。*14

 

▷▷仮説②の検証:過去との比較

ここまでの検証で、手塚くんの口調として「ぜ」がイレギュラーであり、「手塚国光らしくない」口調であるということが分かりました。では、逆に何故、原作では「ぜ」を使用しているのでしょうか?

以下は、中学1年時の手塚くんが使用した終助詞を中学3年時の手塚くんと比較した表です。

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「だ」は中3時にも頻繁に使用していましたが、「ぜ」は先述した通り1回のみ、「かな」に至っては中3時には一度も使用していません。中1から中3の間で、手塚くんの言葉遣いが変化していることが分かります。

また、中学1年時の手塚くんが「ぜ」を使用したのは、大石との会話で青学全国制覇の目標を口にした場面です。

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許斐剛テニスの王子様』17巻、集英社、2003(デジタル版:2012)、115頁

この中学1年時の回想は、大石が手塚くんの肘の怪我の理由を説明する場面で出てきます。「決着をつけようぜ」も跡部様との試合で肘の怪我が再発した場面で出た台詞です。
手塚くんが跡部様との勝負に際し「決着をつけようぜ」と”手塚国光らしくない”口調で宣言したのは、1年時に大石と誓った青学全国制覇への気持ちが蘇り、言葉遣いが当時に戻ったからではないでしょうか。

 

▷結論

「ぜ」という言葉遣いは、原作の時間軸では「決着をつけようぜ」以外では出現しておらず、手塚くんの口調としてはイレギュラーで違和感のあるものと言えます。そのため、OVAでは「手塚国光らしくない」として修正されたのでしょう。

では何故原作では「ぜ」を使用しているのか。その理由として、肘の痛みと共に青学全国制覇を誓った中学1年時の気持ちが蘇り、言葉遣いが当時に回帰したためである、と結論付けます。

以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました。

 

▷参考文献

許斐剛テニスの王子様』全42巻、集英社、1999〜2008

金水敏ヴァーチャル日本語 役割語の謎』、岩波書店、2003

金水敏役割語研究の展開』、くろしお出版2007

金水敏『<役割語>小辞典』、研究社、2014

佐々木瑞枝(監修)・日本語とジェンダー学会(編集)『日本語とジェンダー』、ひつじ書房、2006

 

▷関連

lookmusical.hatenablog.com

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*1:そういうイメージでしたが、当該のシーンが収録されていたのは18巻/全42巻だったので、割と中期でした。

*2:アニメに関しては2019年2月26日現在、Amazonプライムで見られるので興味がある方は確認してみてください。本研究のシーンはエピソード67「最後の一球」で見られます。真田、柳、赤也が試合を観戦しているんですが、立海のカラーが決まってなかったのかジャージが赤だったりするのも味わい深いです。

*3:因みに、実写映画「テニスの王子様」では修正が行われていないそうです。ミュも1st夏冬、2nd、3rdすべてで原作通りの台詞が使用されているそうです。

*4:詳しい方は諸々「そうじゃなくない?」「そこは後年の著書でちょっと変化したくない?」という部分もあるかと思いますが、今回の研究ではそういう感じで使われてるんだな~と思っておいてください。

*5:以下の条件を使用しています。

・同一キャラクターでも、回想で1年以上の前の描写があった場合は別枠で集計した(「手塚(過去)」という感じ)。タカさんもバーニングモードは別で集計してある。
・方言話者は除外。
 ただし、標準語訳がついているものに関しては集計した。(比嘉中はカッコで標準語訳がついていたので)
・複数人が同コマにいるなどで明確に発言者が分からないものは除外。
・敬語は終助詞が限定されるので除外。(「そうですね」とは言っても「そうですな」とは基本言わない、「そうだね」と言わないキャラクターでも「そうですね」ならば言う、等。)
・イリュージョンや物マネは調査対象外とし、マネした方された方どちらの集計にも入れない。
・発言とモノローグも分けて集計したが、その差による特筆すべき特徴はなかったので最終的にまとめている。

*6:手塚,手塚(過去),越前,大石,大石(過去),不二周助,菊丸,菊丸(過去),河村,河村(バーニング),乾,乾(過去),桃城,海堂,堀尾,加藤,水野,荒井,池田,林,桜乃,朋香,跡部,忍足侑士,芥川,向日,宍戸,鳳,樺地,日吉,滝,幸村,真田,柳,柳(過去),丸井,桑原,仁王,柳生,切原,千石,亜久津,南,東方,室町,新渡戸,喜多,壇,橘桔平,伊武,神尾,石田鉄,桜井,内村,森,橘杏,葵,佐伯,黒羽,天根,樹,木更津亮,首藤,福士,堂本,鈴木,田代,伊藤,山之内,木手,甲斐,田仁志,平古場,知念,不知火,新垣,白石,遠山,千歳,石田銀,忍足謙也,金色,一氏,小石川,財前,観月,不二裕太,赤澤,木更津淳,柳沢,金田,野村,季楽,北村,高瀬,源,羽生,昆川,津多,九鬼
(↑ネームドキャラだけど省いてしまっているのもいます……。集計項目には引っかからないキャラクターなので研究への影響はないですが、ファンの人ごめんなさい。)

*7:手塚,手塚(過去),越前,大石,大石(過去),不二周助,菊丸,菊丸(過去),河村,河村(バーニング),乾,乾(過去),桃城,海堂,堀尾,加藤,水野,荒井,池田,林,桜乃,朋香,跡部,忍足侑士,芥川,向日,宍戸,鳳,日吉,幸村,真田,柳,柳(過去),丸井,桑原,仁王,柳生,切原,千石,亜久津,南,東方,室町,喜多,壇,橘桔平,伊武,神尾,石田鉄,桜井,内村,森,橘杏,葵,佐伯,黒羽,天根,樹,木更津亮,首藤,福士,堂本,鈴木,田代,木手,甲斐,田仁志,平古場,知念,観月,不二裕太,赤澤,木更津淳,柳沢,金田,野村,季楽,北村,高瀬,源,羽生,九鬼

*8:以下の4か所。

・3巻「放せよ」
・17巻「遠慮するなよ」
・33巻「あまり調子に乗るなよ」
・41巻「無茶はするなよ」

*9:命令表現については「どこまでを命令と取るのか?」で悩んだため違うルールで取ったらもう少し違う結果になるかもと思います。「~してくれ」を命令と取るか?とか(今回の集計では省いています)。

*10:手塚,越前,大石,不二周助,菊丸,河村,河村(バ),乾,桃城,海堂,堀尾,加藤,水野,荒井,跡部,芥川,向日,宍戸,日吉,幸村,真田,柳,丸井,桑原,切原,千石,亜久津,橘,伊武,神尾,佐伯,黒羽,福士,木手,甲斐,平古場,観月,不二裕太,赤澤,桜乃,朋香,杏

*11:研究要旨では人数を39人としていたのですが、それは女の子たちを省いていたからです。発表でも言い忘れていました。要旨を購入された方すみません。比較内容的にやっぱり女の子も入れたほうがいいと思いますので入れます。

*12:例えば、首藤は集計に引っかかったのが全項目中で「ぜ」1回のみなので、データの上では語尾を「ぜ」としか喋らないキャラクターになってしまいます。

*13:真田の言葉遣いにおける特徴は手塚くんと非常に似ており、男女で絞っていない場合でも終助詞の内訳に類似が見られます。

*14:参考程度に聞いてほしいと言った理由は、表に乗せたキャラクター以下の順位になると音変化との相関にばらつきが出てくるからです。また、回数でなく割合順位付けした場合も相関関係にばらつきが出るため、根拠にするには微妙です。本当に参考程度ということで……。

ドラマ終了時点での『PRINCE OF LEGEND』各キャラクター印象

"全オタク必見・2018秋覇権アニメ"ことドラマ『PRINCE OF LEGEND』全10話が終了しましたね〜〜〜!!!!(説明台詞モブ)

毎週プリレジェの新作が見られた2018年秋は本当に最高でした。
次は3月(遠い!)に劇場版『PRINCE OF LEGEND』が公開となるわけですが、多分それまでにまた色々情報が投下されると思うんですよ。そして新情報が出るたびにキャラクターの印象が変わっていくのがプリレジェくんなので、劇場版を観たら今抱いている感情が丸っきり変化してしまうと思うんですね。既に映画特報でテロリストを制圧する展開が来て意味が分からないし……。
youtu.be

ということで、ドラマ終了時点で自分がキャラクターに抱いている印象を書き留めておこうと思います。劇場版観てから「あ~こういう印象だったな~」って比べて楽しみます。

チームの印象→各キャラクターの印象→各キャラクターの推しシーン、の構成で行くぜ。プチョヘンザッ。

(↓各キャラクターの公式プロフィールと写真はこっち)
prince-of-legend.jp


team奏
メインチーム!
5話ナレーションで奏様と尊人(team京極兄弟)を指して「恋の三つ巴が火花を散らす」って説明されているけど、それはteam奏のことなのでは?と聞くたびに思う。チーム内部で閉塞した感情がギチギチに停滞してこんがらがっており、今にも破裂しそう。今後どう動いていくのか気になりますね。



朱雀奏(片寄涼太)
正統派王子。唯一自分の名前をチーム名に冠する男。プリンス・オブ・プリンス。
「金持ちの御曹司キャラ」って説明から、放送前は須王環みたいな感じかな?と思っていたが、実際見てみるとテディベアカットティーカップ・トイプードルだった。
公式は奏様をツンデレ扱いしているけど、個人的にはツンデレとはまたちょっと違うような気がする。単に「小2」の方が合ってるんじゃない?
メタ的に言って、初代伝説の王子がTAKAHIRO様、二代目伝説の王子が岩田剛典様なんだから片寄さんが伝説の王子になるに違いないんだろうな〜という感じ。そうでなければ、伝説の王子自体が選ばれないとかそういう展開になるんじゃないだろうか。
わたしは奏様の性格のいいところが大好きなので、果音様を騙して惚れさせてから捨てようとか言い始めたときはヤメテー!と叫んだのだが、結局現状奏様が振り回されている側なのでまあ、まあ……と見守っている。根は誠実で女性に優しいのは間違いないので、早くちゃんと自分の気持ちを自覚して果音様を大事にしてあげてほしい。
多分2年前のパーティで果音様に会ってる。

★推しシーン:
・「こういうスタイルの家もあるのか……」
奏様の性格の良さがめちゃくちゃ現れている台詞! 金持ちキャラの典型だと「うちの犬小屋の方が大きいぞ」とか言う場面だと思うんですけど、この誰のこともバカにしない柔らかい言い回し、奏様がみんなから慕われている理由が本当に分かります。



久遠誠一郎(塩野瑛久)
はい、みんな大好き・側近界の絶対的エース・俺たちの誠一郎。「絶対に幸せになってほしい」が視聴者の総意ではないでしょうか?
「生きてる限り永遠だ!」がつらい。わたしはHiGH&LOWのオタクだから分かるんですが、LDHの文脈上、変化せず永遠に続いていくものはないし、変化を恐れて停滞すると待っているのは死なんですよ。CHANGE OR DIEなので。誠一郎の考えは間違いなく否定される。そして、奏様が果音様のメインヒーローである以上、きっと誠一郎の想いは実らない。でも、永遠に同じものはないというのは未来への救いでもあって、悲しいことが起きても人生は続いていくので、その先で幸せになってほしい……。
ついポエムを詠んでしまいましたが、2話で見せた物理モノローグ(古畑任三郎スタイル)が大好きです。あと声がすごく良くないですか? 「門は?」「ないな」の声の響きめちゃ好き。

★推しシーン:
・「……皆まで言うまい」
皆まで言うまい……。

鏑木元(飯島寛騎)
何を考えてるのか分からない男。
21世紀の日本で「お仕えする方」を探していた点については、わたしとしては「まあそういうこともあるのかな……」と納得しています。でも完全に趣味活動というか、奏様が「自分の認める主君」の座から落ちた時にアッサリ見限りそうなんだよな。エゴしかない。
奏様のことは本質的に利用しているだけだし、果音様には興味がないし、でも誠一郎のことは大好きなんだよな……。「憧れと憎しみは表裏一体です」って自分が誠一郎のこと大好きだって話だよね?

★推しシーン:
・1話で果音様を尾ける奏様を「私が尾行します」と制したシーン
「おやめください」とかじゃなく「私が尾行しますので」って何!? こわい。


team京極兄弟
好きです、京極兄弟。明らかにHiGH&LOWの雨宮兄弟を踏襲したキャラクターなので好きになるのは間違いなかった。でももっとクールなタイプだと思っていたので、最初にチームソングを聞いた時は「こんなオモチャ箱みたいなチャカチャカした曲で合うのかな?」と訝しんでおりましたが、登場してみるとテーマソングのイメージピッタリの楽しい仲良し兄弟でか~わ~い~い~。果音様のことで主に竜ちゃんがちょっと気まずいを思いしてるけど、兄弟仲が悪くなることは絶対になさそうで安心できる。



京極尊人(鈴木伸之)
マイ推し。
長所は基本的に常識がありしっかり者で愛嬌があって大らかで懐が深く顔がかっこいいこと。短所は思い込みが激しく人の話を聞いておらず言動がそこはかとなくオッサンくさいこと。思い込みの激しさに朱雀家の血を感じるし、京極家の父親も一途とストーカーが紙一重の男なので、両家の男の悪いところを引き継いでしまっている感がある。
初登場回の最大風速がすごくて「推す!」となったのですが、その後どんどんバカとウザさが露呈していったのでこのまま推していいものか結構悩んだ。いいヤツなんだけどバカなんだよな……。さすが三留しただけある。10話でまたかっこいいところを見せてくれたのでまだ推しています。劇場版でもかっこいいところ見せてね……。
語彙とムーブからオタクの才能をバシバシ感じる。地下アイドルのおっかけとかやったらいいんじゃないかなと思うけど、果音様を信仰しつつも「自分のものにしたい」という欲求が前提にある1on1コミュニケーション型なのでやっぱり違うんかな。オタクをやった方が一般の個人に感情をぶつけるよりも他人を侵害する程度が低くなるし、充実すると思うからオススメしたいんだけど。
無理矢理キスするのはレイプなので反省してほしいと思っていたら、10話で謝罪していたので良かった。プリレジェ世界のドライな目線を通すとストレートにヤバイ男だけど、キラキラ恋愛ものだったらそんなに珍しくもないタイプだと思う。人間として見ると諸々許されないのですが、女性向けエンタメで人権を踏みにじられることに慣れたオタクとしては、コンテンツとしての彼を推せてしまうんですよね。
恋愛に関して、果音様のことを意志を持った対等な人間として認識できていない節がある。そこを乗り越えてほしいと思うけど、どうなんだろうな~。

★推しシーン:
・10話で奏様に「逆だろ」って言うシーン
あの作画すごくないですか!? 絶対原画がクリアファイルとか下敷きとかになって売り出されるやつ!!!! ドかっこよかった。最高。100回見た。
9話までは4話の「お前やな女だな」が最推しでした。字面だとネガティブな台詞なのに愛しくて仕方がないのが伝わってくる甘い声色で、これを携帯のアラームに設定して毎朝聞きたい(オタクはすぐに好きな台詞を着信音にしたがる)。尊人は「かのーん!」とか「竜ちゃん!」とかも甘い声色で発音してくれるのでたまらんですね。あと他の台詞も発音が緩くてかわいい。「かいちょお」とか。



京極竜(川村壱馬)
私のCP上の推し。seigakupostは竜果(竜×果音)を応援しています。
プリレジェ界のうちはサスケ。女オタクはみんなサスケくんが好きなので女オタクはみんな竜ちゃんが好き(暴論)。
公式は奏様をツンデレ扱いしていますが、わたしはプリレジェのツンデレ枠は彼だと思っています。竜ちゃんも早く恋心を自覚して!(「あの女を好きになったんじゃなくてアニキのものが欲しくなっただけだ」って着地本当に何?)
演者の川村壱馬くんの演技がバリバリ上手い! ナレーションも上手い! 台詞も表情も動きも上手い! ボーカルって何やる人?って感じに演技がめちゃうま。 ボーカルって何やる人?(歌う人だよ)(「森のくまさん」もめちゃくちゃ上手かったですね……)
詰問されてうろたえてる演技がめっちゃ好きなので、果音様に真正面から詰られてうろたえるシーンがほしい。頼みます劇場版。

★推しシーン:
・尊人にデートを申し込まれた果音様に口パクとジェスチャーで指示を出すシーン
連絡先教えてもらってニヤケてるところと迷った。ていうか5話は壱馬さんの演技が光りまくってるので5話全部好きですけども! でも特にここはかわいくて大好き。竜ちゃんもっと果音様とワチャワチャして~!


teamネクス
プリレジェのショタ枠。
Youtubeのトレーラーなどでよくダンスシーンが使われていたので、女子生徒たちに取り囲まれてキャーキャー言われているシーンなんだろうなと思っていたら、本編で流れたところ人ひとりいない屋上で自主練習しているシーンだったのでびっくりした。じ、地味! そんな素朴な感じなん?と心配になったが、担当回ではちゃんとモテモテキャーキャー描写が来たので安心した。
ドラマの終盤でいつの間にか京極兄弟と仲良くなってて可愛い。チムネクは光輝以外ははっきり「その他」の扱いだし劇場版でもゴールドとブラックはサポート要員かな。
友人に「teamネクストってダンスチーム名ってこと?」って聞かれたけど言われてみると確かに言及されてないね?



天堂光輝(吉野北人)
憧れの果音様に対して「すれ違う」というアクションのみ起こして当然見向きもされないのを、「もしかして……目が悪いのか?」などと言ったときはヤベー奴だなと思ったけど、その話の最後でちゃんと自分から声をかけて対話していたのでえらい!となりました。そう、必要なのは対話と相互理解だよ。聞いてるか王子全員。
光輝登場以降は周りでは割と光輝を応援する声が多く、わたしとしては、惚れたきっかけは加点対象にはならなくない?ていうか「守りたい」も幻想の押し付けでは?「女」だから「守りたい」って何?とちょっとトゲトゲしていたんですが、実際痴漢から助けてくれたし、10話の告白がめっちゃ良かったし、応援しない理由がなくなってきたな……。そもそも出会いと惚れたきっかけが「泣いてるか弱い女の子に何もしてあげられなかった」なことを考えると「守りたい」になるのもまあ分かるし。でも奏様と尊人に比べると一歩追いついていない感があるので頑張ってほしい。年上と付き合ってるの似合うし、果音様との相性自体は悪くないと思うよ!
あと、まだ北人さんの演技がたどたどしいところが光輝の年下感と一生懸命さをいい感じに増幅させていてよいと思います。
竜ちゃんとシンメっぽくなっててかわいいね。

★推しシーン:
・「果音さんと幸せになりたいんです!」
この告白がめっちゃ良かったので大量加点してしまった。10話の告白は奏様も尊人も「いいじゃん」って感じだったけど光輝がダントツで良い。ちゃんと相手と対等に歩んでいこうという意志が見える。良い~! 北人さんの演技のおぼつかなさが声色に切なさと必死さをプラスしていて本当に良い告白になっていた。



日浦海司(藤原樹)
こんなチャラい見た目でおばあちゃんの知恵袋を披露して来るの何? パツキンでおばあちゃん子ってそれ絶対良い子じゃーん!っていう。チムネクちゃんはみんな良い子。

★推しシーン:
・おばあちゃんの格言をドヤ顔で披露して誠一郎にドヤ顔で訂正されるシーン
かわいい~。

小田島陸(長谷川慎)
日浦くんが「ばーちゃん言ってたし」という分かりやすいフックを用意していることに比べるとちょっと印象が薄いかもしれない。でもやっぱりいい子。

★推しシーン:
・10話で「兄貴は伝説のヤンキーだけどな」とドヤった竜に軽率に肩パンかましたら凄まれてビビってるシーン
このビビってる表情がガチっぽくてめっちゃ好き。
仲良くなったヤンキーにノリで絡んだ結果キレられてるの、本当に「素朴」で味わいがある。


team生徒会
シュール&ギャグ。プリレジェのうすた京介枠。生徒会はいつもまとまって団子になって動いていて可愛いですね〜。アゴラップって何なんだろうね。



綾小路葵(佐野怜於)
葵会長、耳とか鼻とかがいつもほんのりピンク色で可愛い。
単体としては好きなんだけど、対果音様レースだと一番ダメ。「名前を覚えたから運命」って何だその破綻しかない理論は。舐めとるんか。本当にその志望動機で通ると思ってる!? 「他の企業は名前が覚えられなかったけど初めて企業名が覚えられたので御社が第一志望です」って言うんか!? おん!? いや葵会長は就活しないと思いますが……。単体では好きなので、あんま本筋に関係ないところで悔しそうだったり楽しそうだったりしていてほしいな。

★推しシーン:
・5話で転校すると宣言して揉めている京極兄弟を見て「困ったことになりましたねえ」って爪をいじってるシーン
自分でも何でか分からないけどここ、めちゃくちゃしゅき。。。♡ってなっちゃう。何故? 他の推しシーンは「ここが一番このキャラクターの長所が表れてる」とかで選んでたんですけどこれだけは本当にただの性癖です。なんかあの……葵様みたいな男がこういう興味なさそうなど〜〜でもいい態度取ってるのめっちゃセクシーじゃないですか? 



ガブリエル笹塚(関口メンディー)
名前といいビジュアルといいギャグ要員なんだよなあ。面白いし美味しいんだけど、折角だしメンディーさんに正統派キラキラ恋愛ものの役どころを与えてほしかったところもある。
わたしは果音様のシンパなので、葵会長の告白を断った果音様を「失礼だろうが!」って責めた時からガブ笹に対してちょっと思うところがあります。告白を断っただけの女子生徒を責めるんじゃないわよ!(そーよそーよ!)
果音様に関係ないところでモンペしてくれる分には何の問題もないです。側近たちとバトルしたりしないかな?

★推しシーン:
・玄武高専が禁煙だと聞き「うちの学校もだ!」と声を荒げて卓球のラケットで殴られているシーン
基本的に葵会長にないがしろにされているガブ笹が好きです。


team先生
チーム1人!



結城理一(町田啓太)
ハイ、みんな大好き結城先生!
わたしたちの「ところで伝説の王子って何?」という疑問に8話にして初めて答えてくれたのは結城先生だった。ありがとう結城理一。
そのキャラクター性は「ナルシストの英語教師」だけで推して知るべしですが、型を用意しつつもきちんと咀嚼・再定義して舞台に配置して来るのがPRINCE OF LEGENDなので、結城先生も独自の深みがある本当にいいキャラクターになっています。担当回である8話直前で公式から婚約者の存在が提示された時のTLのざわめきが忘れられない。でもこの設定で「教師と生徒の♡禁断の恋♡」ルートを潰して倫理性を担保しているの、本当に丁寧で信頼できる。
8話前半はほぼ結城先生の一人語りで回してるので、町田啓太さんのナレーションが上手さが堪能できる。町田さんのナレーションって技巧的な上手さですよね。聞いてると「あーテクってるなー」とビシビシ感じる。テニプリキャラソンで言う高橋直純さんのような技巧派枠。同じくナレーション上手な川村壱馬さんはサラッと情緒的な上手さなので、テニプリキャラソンで言うと甲斐田ゆきさんだと思うんですよ。早く結城理一と京極竜のプリレジェにおけるGENIUS~B&B~コンビの絡みが来ないかな(どんな絡み方するか全然想像がつかないな)。
結城先生のことは大好きだし伝説の王子の道を応援していますが、それはそれとして、これから先毎回伝説の王子選手権に参加して毎回敗れて永遠に伝説の王子を目指していてほしいなというところはあります。
8話を視聴するたび「I'm the prince」に「Yes!」って応え続けているので、プリレジェライブの結城先生パートで「I'm the prince」って台詞が来たらわたし1人で「Yes!」って叫んでしまうと思う。恥ずかしいのでみんなで一緒に叫んでもらえると嬉しいです。

★推しシーン:
・10話で「ああ!」って叫んだあと3Bに「すまない……」と謝るシーン
結城先生のこういうところが一番の美点だと思うんですよ! わたしは結城先生の対人能力と倫理観は相当まともだと思っていて、迂闊なことは言わないし、相手を尊重するし、ちゃんとした大人の男なんですよ。狂ってるのは気だけ! 堪えられなくて叫んじゃうけど、他者を慮ってちゃんとフォローを入れられる人なんですよね。そこの他人の自分とのバランスがすごく良い。自分のことは最高だと思ってるけど、だからといって他人を侵害したり見下したりはしない。良いナルシストだ……。なので、結婚生活も上手くいくし奥さんのこともちゃんと大事にするんじゃないかなと思います。
コメディ枠での推しは、8話で「トップオブザプリンス♡」という文言を聞いて「トップオブザ……」とサイレントに口をパクパクさせるシーンと、10話で歴代の皆さんの肖像に詰め寄っているシーンです。


team3B
team3Bと言いつつ実態はteam嵯峨沢ハル with Bという感じ。チムネク以上にメイン以外の2人が「その他」扱いされている。劇場版だともうちょっと出てくるかな?



嵯峨沢ハル(清原翔)
完全に出る作品を間違えている男。1人だけキラキラ恋愛作品から迷い込んでいる。どうしちゃったの? ここはプリレジェですけど……。
初めて果音様とのまともで双方向的なコミュニケーションを見せてくれたキャラクターでもある。9話にして、初めて……。
当初はもっとオラついた男なのかなと思っていたけど、8話でいきなり泣き出したところが駄目な大型犬みたいで庇護欲を掻き立てられた。「こりゃあーモテますわあー……」という感想。絶妙な「わたしがついていてあげなきゃ」感がある。年齢操作成人済み千歳千里ばりのヒモのポテンシャル。
1人だけ「それらしい」キャラクターであるが故のヤバさがありますね。「果音の男は俺が決める」じゃあないんだよ。果音様宅に来客があると即出てくるのは何なんだ? 人感センサーでも仕込んでる?
伝説の王子選手権に関する「もっとモテたくて伝説の王子を目指したけど優勝できなかった」からの「王子とモテは必ずしも一致しないという結論に至った」の、そこに着地する!?という力技にびっくりした。「俺は自分で思うよりモテないのではないか?」とかじゃないんだ。ネアカパリピの肯定パワーすごい。2年前に高校生だから、3年前の二代目伝説の王子選手権で龍崎恭也様に負けたのかな。
正直果音様とくっつくことに何の異論もないのですが、自分の気持ちに気付きもせずに果音様の手を離してよく分からない胸の穴を水面下で見ないふりしながら「女が好きだー!」って生きていくのもそれはそれで捨てがたいですね。自覚するならくっついてほしい、くっつかないなら自覚しないでほしい、そんな感じです。

★推しシーン:
・回想で「女が好きだー!」と叫ぶシーン
ここめちゃくちゃいいシーンですよね。ヒロインの心の傷を軽くしてあげるシーン。9話回想、基本的にいい話なのと、銀河万丈さんがさくさく場面を進めるので、「ザ!世界仰天ニュース」的な感動ストーリー感がある。「果音にだけはエロい気持ちにならない」って、つまりは特別ということなので、それを恋と呼んでもいいんだよ……。



翔(遠藤史也)
TAICHI(こだまたいち)
ごめんここだけまとめて紹介しちゃうし推しシーンもなしです。だってあまりにも出番が少ないので……。劇場版に期待。
結城先生に自己紹介してるとき、ハルと翔は実際に仕事道具を持ってるのにTAICHIはエアギターなの、普段から楽器は弾くふりだけしてますという暗示なのかなと疑っています。


何とか書ききった!
これを書いている途中で『劇場版PRINCE OF LEGEND』最速上映の先行当落発表があり、無事最速上映初日に行けることになりましたので、わたしの次回新規プリレジェ摂取は2月13日と相成りました。あと1ヶ月半ほどドラマの王子たちを噛みしめて味わいを深めようと思います。王子!王子!王子!王子!

あなたを愛しているということ(「おおきく振りかぶって」の矢野淳の魅力について)

矢野淳くん、世界で1番大好きです。

矢野淳とは?

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矢野淳(やのあつし)、通称ヤノジュンは、漫画「おおきく振りかぶって」に登場する高校球児。
美丞大狭山高校野球部所属、3年、(おそらく)副キャプテン、セカンド、背番号4、打順は3番。
7月3日生まれ、蟹座、O型。177cm69kg。兄弟構成は兄が1人、両親と祖父母と同居。(今は寮生活かも?)


基本プロフィールはざっとこんな感じです。
わたしは矢野くんのことが本当に本当に心の底から大好きで、「おおきく振りかぶって」12巻を読んで以来、世界で最も愛している人間のうちの一人です。
舞台「おおきく振りかぶって 夏の大会編」を観て、改めて矢野くんが好きという気持ちが湧いてきてたまらなくなったため、如何に矢野くんが素晴らしいか、矢野くんのどこが好きかについて語りたいと思います。

(舞台での矢野くんについては別記事に書きましたのでそちらも読んでいただけると嬉しいです。)
lookmusical.hatenablog.com

ビジュアル編

顔!!!! 顔の話をします!!!!! まず顔より始めよって郭隗も言ってた!(言ってない)
まあ見てもらえば分かりますが、あのね、かっっっこいいんですよ……。
キリッとしたつり目、高校球児にしては長めの短髪、黒髪。授業中に黒ぶち眼鏡をかけていてほしい~!(突然のメガネフェチ失礼)
前髪の長さに反して襟足が短く刈り揃えられているところも大変キュートです。素晴らしい首筋です。
あと、私見で大変恐縮ですが、177cmってめちゃくちゃ理想の身長じゃないですか? 坂田銀時銀魂)とか影浦雅人(ワートリ)とかと同じ!
体つきもがっしりとして筋肉質です。流石県内ベスト8の3番バッター。打席に立ってるコマなどを見てもらえれば分かりますが、本当に肩とかしっかりしています。

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ひぐちアサおおきく振りかぶって』12巻、講談社、2016(電子版)、92ページ

また忘れてはいけないのが、矢野くんの西浦戦初打席、ビデオで見たシュートの球筋を思い出している場面の表情。アニメでめちゃくちゃキュートに作画されてて度肝を抜かされました。普段キリッとしてるだけにギャップが効いた。
後述の性格編でも言及しますが、矢野くんって強くて正しくてかっこいいだけじゃなくって、ちゃんと''男子高校生''なんですよね。そういう「等身大」感に惚れ惚れとしてしまいます。

実力編

矢野くんは野球センスもピカイチです!
何せ、本作品の主人公である三橋の癖玉を初めてまともに打ち返した相手なのです(打ち慣れてる三星組は除く、慎吾さんは打ち損じ、佐倉は''勝負''に負けたので除外)。
それ以外でも西浦戦では積極的に点に絡んでおり、主人公たちを苦しめています。
打順は3番、守備も上手い(遊撃手である川島との連携を西浦側から「プロじゃねんだから!」とまで褒め称えられています)。
それと、作中で明言はされていませんが、おそらく副キャプテンです。根拠は、新聞の取材にキャプテンである和田と並び監督に肩を組まれて写っていること、チームミーティングに投手組・捕手組・キャプテンに混ざり参加していることです。

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新聞記事の写真に写る矢野くん(ひぐちアサおおきく振りかぶって』11巻、講談社、2016(電子版)、144ページ)
また、これは性格編とリンクするんですが、プレースタイルにまっすぐで不器用な人間性が滲み出ています。
西浦側のサインが美丞に盗まれているとバレる決定打となったのは矢野くんの打席です(真面目で不器用な性格ゆえに!)。
サイン読んでそのまま打っちゃうからバレたんですよ。常に直球勝負で駆け引き下手なんです。その前に川島くんの駆け引き上手な描写が挟まれているので、ことさら矢野くんの不器用さが際立っています。
この打席では犠打の指示が出てるのに打席に立っている間にうっかり指示を忘れて普通にヒットを打って監督に睨まれており、本当にめちゃくちゃまっすぐでかわいい……。

性格編

ここがメインです、矢野くんの一番の魅力はその人間性です!

「塁上でまた危険なプレーしたらその場でお前降ろすよう監督に言うぞ」
「お前はもしかしたら誰よりも勝ちてーのかもしんねーけどルールギリギリのプレーするたびお前はオレ達や監督の顔に泥ぬってんだかんな」
「自分にも だぞ」
「胸はって勝とーぜ!」

分かりますか、この、まっすぐさ……。
これは矢野くんが、自チームの正捕手である倉田が故意にラフプレーをしていると気づいて忠告している場面での台詞です。
おそらくチームで唯一、矢野くんのみが不正に確信を持っており、かつ、矢野くんのみが忠告しているのです。
このですね〜〜〜、この、正しさと実直さと覚悟!
矢野くんは、自分の中に確固たる「正しさ」の軸があり、それを貫ける覚悟を持っています。
チームメイトが倫理に反することをしていたとして、普通はそれを真正面から指摘したら相手から恨まれるかもしれないと考えるはずです。また、不正を正したとして、もしかしたらチームメイトにも疎まれる可能性もあります(何故なら、今までそれで勝てていたのだから)。
それでも自己の尺度に照らして「正しいこと」を貫き、それによる不利益を被るだけの覚悟で発言している。直接まっすぐ伝えるあたりに矢野くんの不器用さが見て取れます。
同時に、これは倉田とチームメイトに対する信頼でもあります。「分かってくれる」と信じているということです。釘を指すけど信頼もしているのです。
ジャッジメンタルなだけの男ではないしエモーショナルに傾倒するばかりでもない、両方を持ち合わせた、非常に優れたバランス感覚の持ち主です。

同じく、矢野くんの持つ相手への厳しさと信頼の同居が如実に表れている台詞が、「しっかりな!」です。
これは、倉田がサードランナーとして塁上にいていよいよ次が得点のチャンス、イコール、またクロスプレーが発生する確率が高いという場面で、矢野くんが倉田にかける台詞です。
つまり、「見てるからな」と「信頼してるぞ」の両方の意味合いが込められているのです。それを口に出してしっかりと相手に伝えるところ、本当に美徳ですよ……。
(因みに、矢野くんの厳しさについては、投手の鹿島から「お前たまには人ほめたらどう?」と言われていることから、普段から他人に厳しいんだろうなーと窺い知ることができます。)

その反面、倉田が西浦との試合で意図せず相手捕手に怪我をさせてしまった時には、弁明する倉田に対し「近くで見てたから分かってる。引きずんな!」とフォローし、「お前は大丈夫か?腕踏まれたんじゃねーのか?」と心配しています。
倉田がラフプレーをやっていたことを知っていながら、今回はわざとではないと理解して、「それはそれ」として物事を切り替えて判断することができる。厳しいだけではなく、きっぱりしていて潔くて、情に厚く公平、誠実で面倒見が良い、仲間想いで心がまっすぐで素晴らしい人なんです。

矢野くんはこのように大変素晴らしい人間ですし、そのことは一点も疑う余地がありません。その上更に、試合中のベンチで冗談を言って爆笑してるところを監督から他選手とひとまとめに怒られたり、新聞の取材写真に満面の笑みで映っていたりする、ごく普通の高校男児の一面も持ち合わせています。めちゃくちゃ完璧なようでいてこの普通さ、親(作者)であるひぐちアサ先生のバランス感覚が本当にすごい。


ついでに、これは完全に蛇足の妄想ですが、個人的に矢野くんは桐青の島崎慎吾さんと気が合うと思っている(矢野くんと和さんが本質的に似てるから)ので、同じ大学に進んで野球部(''サークル''でなく''部'')で出会って仲良くしてほしいです。
あと、祖父母と同居だからきっと老人に優しいんだよ……。


以上、矢野くんの魅力について語らせていただきましたが、どうでしょう、伝わりましたでしょうか?
正直に申し上げて、矢野くんの魅力はわたしの言葉では語りきれていないと思うので、ひぐちアサ先生による素晴らしい原作を読み、その原作への多大なリスペクトをひしひしと感じる素晴らしいアニメを見ていただいて、矢野淳(cv.阿部敦)に打ちのめされてほしいところです。矢野くんは本当にとてもとても素晴らしい人間なので……。
おおきく振りかぶって」という作品に触れたことがない人も、通ったけれど何故か矢野くんをスルーしてしまった人(!)も、できれば矢野くんの素晴らしさを頭の片隅に置きつつ、どうぞよろしくお願いいたします。

最後に、わたしは、自分自身がこの素晴らしい作品に出会い、更にその中でこの世で一番好きな人間と出会えたことを奇跡のような幸福だと思っています。
矢野淳という存在がこの世にいること、おおきく振りかぶってという漫画があること、それがアニメになったこと、更に2018年に舞台作品となり、新規の「矢野淳」が提示され、改めてこうして向き合うことができたこと、全てがこの上ない幸福です。原作・アニメ・舞台に係わった全ての人に感謝いたします。

今年も来年も再来年も、今までもこれからも、ずっと先まで、矢野くんのことが大好きです。


あなたがここにいるということ(舞台「おおきく振りかぶって 夏の大会編」東京千秋楽に寄せて)

※ほぼほぼ矢野淳(演:倉冨尚人さん)の話しかしていません。※

 

本日、2018年9月17日、「振りステ」こと舞台「おおきく振りかぶって 夏の大会編」を観劇してまいりました。

わたしは美丞大狭山高校の矢野淳(通称ヤノジュン)というキャラクターが大好きです。この舞台は矢野くんのために観に行ったと言っても過言ではありません。この世に存在する全キャラクターの中で矢野くんが一番好きです。(同率有り)

そういうわけで、この公演が発表されたときから、緊張と期待がごちゃまぜになっていました。

いや、矢野くん、どういう扱いになるの?

前作でも阿部とか結構舞台独自の解釈でしたし(個人的には悪ふざけが男子高校生っぽくて好きですが)、まさかコミックリリーフの役割を与えられたり?するのかも???という不安で日和ってチケットは千秋楽の分しか抑えていませんでした。自分の誕生日が9月17日なので、どうしてもそこで矢野くんを見たくて、それ以前に見て「なんか違うな」ってなるのが怖くて……。

千秋楽で見て「なんか違うな」ってなったらとんだバースデーなのでぶっちゃけ賭けだったのですが、結論から言うと賭けには勝ちました。めっちゃ良かったです。

 

具体的にどう良かったのかというと、「矢野くんの依り代が動いている」、これに尽きます。「矢野淳」としての役を公的に与えられた人間が動いている。肉体を持ってそこに「いる」。笑ったり、話したり、走ったりしている。それを見られるなんて、びっくりするほど幸運で、すごいことです。

更に具体的には、三次元に受肉した矢野くんがワンナウトとかツーアウトの形にして手振ってるのとかめちゃくちゃ可愛かったです。永遠に見ていたい。あとキャッチして投げたあとグローブでボール投げた方向をピッと指す仕草をよくしていたんですけど、それがもうかっっっっこよかった。好き。「俺が監督なら球種は捕手に任すね」って言ってる時の指差しポーズとかバリバリにかっこよかった。最高。序盤で「青春ライン」に乗せて踊るんですが、試合応援とかこんな感じでやってたのかなーとか体育祭や文化祭でこういう創作ダンスしたりするのかもなーと想像するのも楽しかった。

アニメだと作画枚数が決まっており「意味のある」動作しか基本は抜かれないんですけど、舞台だと生身の人間なのでステージの上にいる間は常に動いていて何かやってるわけです。最高でした。ありがとうございます。「矢野くんの試合を応援しに来たらこんな感じなんだろうな」という疑似体験ができました。舞台になってくれないと得られない経験でした。ありがとう。

 

矢野淳役である倉冨尚人さんが切れ長の目で真面目っぽい顔立ちでまたいいんですよね。所謂「若手俳優顔」じゃないというか。「若手俳優顔」(目がくりくりしてて邪気がなくて肌が白くてつるつる)もそれはそれでいいんですけど、原作から想像される矢野くんはそういう顔ではないので倉冨さんのような方を当てていただいて良かったです。ありがとうございます。ガッツリ部活やってる高校球児にしては細身かなというところはありましたが、あくまで依り代なのでそこらへんは問題ないです。

演技なのか倉冨さんが元々持っていらっしゃる資質なのかはわかりませんが、試合中の一挙一動に矢野くんの生真面目さが現れていたのも大変良かったですね。千秋楽だったので最後一人ずつ挨拶もあったのですが、他の人の挨拶を頷いたり笑ったりリアクション取りながら聞いていたので、倉冨さんの元々の性格がそういうふうなのかもしれないです。(横にいた佐倉大地役近藤さんはめちゃくちゃどうでもよさそうな表情で人の話を聞いていてそれはそれで面白かった) 

前述した最後の挨拶でも、倉冨さんが矢野くんの作中の台詞である「胸張って勝とうぜ!」を言ってくれて嬉しかったです。「胸張って勝とうぜ」は「自分にも、だぞ」に並び矢野くんの実直で誠実で仲間思いで曲がったことを看過しない性格を表している名台詞なので……。本当に嬉しかった、ありがとうございます。

 

そんなこんなで、HPのキャスト写真や舞台見始めの頃は「フーン?」と思っていた(失礼)のが終わる頃には「矢野くん♡♡♡」となりました。いい誕生日になりました。ありがとうございます。

 

 

そもそも、「美丞大狭山高校3年の矢野淳が好き」ということは、イコール、「今後ほぼ新規で出番が与えられないことが確定しているキャラクターが好き」ということです。

3年、対戦校、引退済、今後の主人公の物語に絡んでくるような要素を持ったキャラクターではない、人気もそれほどない、出番がアニメ化済。

このまま二度と本編に出ることもなく、描き下ろしイラストが出るわけもなく、何の情報も更新されないのだろうと思っていました。それが舞台になったことで、新規の「矢野淳」が提示されて、それを受け取ることができたこと、本当に嬉しく思います。

原作のひぐちアサ先生、この舞台を企画してくださった方々、スタッフの皆様、そして演者の倉冨尚人さん、本当にありがとうございました。 

2017年舞台・ライビュ覚え書き

1月 舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺~再演~(北九州ソレイユホール

2月 ミュージカル『テニスの王子様』青学vs六角(キャナルシティ劇場)

4月 ミュージカル『テニスの王子様』TEAM Live HYOTEI(TOKYO DOME CITY HALL

    ミュージカル『刀剣乱舞』三百年の子守歌(ライブビューイング)

5月 ライオンキング(四季劇場[秋])

7月 小劇場系の舞台

    ミュージカル『テニスの王子様』青学vs立海TOKYO DOME CITY HALL

9月 デスノート THE MUSICAL(新国立劇場

10月  手塚国光 Anniversary EVENT 2017~This is my song for you~(DMM VR THEATER)×3

    レディ・べス(帝国劇場)

    舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇~ヒートアップ~(天王洲銀河劇場

11月  レディ・べス(帝国劇場)

12月  小劇場系の舞台

    三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2017 "UNKNOWN METROPOLIZ"(ライブビューイング)

 

※番外

9~12月 HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY(映画館 ×7、HiGH&LOWカフェ ×3)