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終助詞的観点から見る『リョーマ!』語り - 「テニスの王子様研究発表会」番外

全体の感想は別でまとめています
lookmusical.hatenablog.com

リョーマ!』を見ていて、「今回のリョーマくん、結構オトコノコっぽい話し方をしている?」というのが気になりました。
具体的には「いないな」「留守だな」、あと「~だろ」という言葉も使っていたと記憶しています。

私は以前、無印『テニスの王子様』全42巻分のキャラクターの語尾を調査し、「テニスの王子様研究発表会」というイベントで発表させていただいたことがあります。
lookmusical.hatenablog.com

上記研究では手塚国光に焦点を当てたのですが、全キャラクターのデータを採ったので、越前リョーマも調査対象でした。
そこで感じたのは「リョーマくんって生意気な印象があるけど、意外と言葉遣い自体は柔らかいんだな」ということです。

下記は、『テニスの王子様』のキャラクターの中で一定以上の会話数があるキャラクターを対象とし、使用している終助詞が「男性的」か「女性的」か分け、数に応じて位置で表した散布図です。対象としたキャラクターや終助詞についての詳細は、前述の研究発表会資料に記載しています。
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越前リョーマは図の左上に位置しています(字が読みづらくて恐縮です)。これは、リョーマの話し方が非常に柔らかいことを意味しています。終助詞に着目した場合、作中で最も柔和な話し方をしているキャラクターのひとり*1です。

この調査を背景として、『リョーマ!』での「いないな」「留守だな」「~だろ」に「おや?」と思ったわけです。「〜な」「〜だろ」どちらも、「男性的」な終助詞に分類されるからです。
では、原作全体から見たデータとしてはどうでしょうと言うことで、調査結果を引っ張ってきました。

★使用回数
・「~な」:7回
・「~だろ」:4回

リョーマが使用している全終助詞に対する比率
・「~な」:1.9%
・「~だろ」:1.1%

無印『テニスの王子様』全42巻分に対する数値です。
こうして見ると、まあ……そんなに気にするほどでもないのかな?という感じがします。
リョーマ!』が100分(テニフェスpetit含む時間ですが)で「~な」2回、「~だろ」1回と考えると、まあ……? 回数と時間なので単純に比較できないけど……時間にしたら100分どころじゃないけどそれも映画とアニメの違いがあるし……難しい!

数値は置いといて、どこに引っ掛かりを覚えたか更に深堀してみます。
リョーマが原作で「~な」を使用した場合の表記を見てみると、すべて「~なあ/なぁ」の形になっていました。

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許斐剛テニスの王子様』42巻、集英社、2003(デジタル版:2012)、22頁

こういうのです。
映画では「~な」と言い切っているので気になったのかもしれません(もしくは、映画で「~なあ」と言っていた箇所は違和感を抱かず耳に残らなかったかもしれません)

終助詞の「な」にはいくつか用法があります。全部抜くと長くなるので詳しくは「デジタル大辞泉 『な』の解説」をご参照ください。→なとは - コトバンク
この解説を見るに、原作リョーマの使用する「~なあ」はたぶん「感動・詠嘆」に分類されるかと思われます。
対して、『リョーマ!』で使用された「いないな」「留守だな」は「軽い断定・主張」に入るっぽい?ので、そこも気になりポイントだったのかもです。主張・断定のほうが男性語としての「~な」感あるし。
(この分類については、今これを書くにあたりちゃんと書籍とかを読んだわけではないのでちょっと自信がない。ゆるふわ言語調査なので間違ってたらごめんなさい。)

因みに、無印42巻の中でリョーマの台詞に「~な」が出現した箇所は3巻1回/6巻3回/8巻1回/10巻1回/42巻1回、「~だろ」は1巻2回/9巻1回/11巻1回、と初期に寄っているので、『リョーマ!』のリョ桜描写と絡めて原点回帰と言ってもいい……かも!(新テニでもリョ桜来たけど!)

あと今更ですが、「リョーマくんは原作でも『~な』を使ってるよ」と書いてきたものの、「~な」と「~だな」で分けると7回と0回でした。「~だな」は無印原作では使ったことない。詠嘆どうこう抜きに単純にそこでは?
ついでに、新テニは調査してないので新テニでは使いまくっている可能性もある。いつか新テニも調べたいな!



おまけ)
テニスの王子様』全42巻中でリョーマが「~な」「だろ」を使っている箇所抜粋

★「~な」7回
・3巻
 P138「(うるさいなぁ!)」
・6巻
 P96「イヤーな先輩が多いなぁ」
 P106「目の前の敵を倒したいなあ…」
 P142「しょうがないなぁ」
・8巻
 P9「あー あついなあ」
・10巻
 P121「サラッと拾うんだもんなぁ」
・42巻
 P22「やっぱ楽しいなぁ…テニスは」

★「~だろ」4回
・1巻
 P32「決勝まで試合が残ってるんだろ?」
 P74「石入ってるんだろ!?」
・9巻
 P78「別にアンタの兄貴だけじゃないだろ!!」
・11巻
 P92「アンタ テニス部なんだろ?」

*1:リョーマ以外で「女性的」な終助詞を使っている比率が大きいキャラクター:加藤、水野、不二周助、木手 等